志高く活躍してもらう人材を育てたい――。入社後はクビを切ることなく、本人の能力を最大限引き出して会社に貢献させるのがトヨタ流だ。

※プレジデント誌の特集「トヨタvsグーグル」(2013年9月16日号)からの転載記事です。

下位5~10%のバッドパフォーマーを切り捨て、優秀な人材と入れ替えて生産性向上を図るのが外資系流だが、入社後はクビを切ることなく、本人の能力を絞り出すように最大限引き出して会社に貢献させるのがトヨタ流だ。宮崎直樹元専務(現豊田合成副社長)も「いったん会社に入ったからには、この会社のなかでやりがいや生きがいを見つけてもらう。そのためには、とにかく粘り強く育てていくという考えが基本にあります」と指摘する。

トヨタの価値観を表す「トヨタウェイ」を発表した01年、当時の張富士夫社長(現名誉会長)はトヨタ社員に向けて、グローバルトヨタの「人材育成元年」を宣言した。グローバル競争に勝ち抜くために若手から幹部に至るまでの育成システムのプログラムも用意した。その1つが採用内定者へ入社までの半年間海外留学させる研修制度。技術系を中心に毎年10人程度をペンシルベニア大学へ派遣している。また、入社5年前後の若手社員が、海外で1年程度語学の研修をしながら現地法人で働く制度もある。

そして今は入社4年目から9年目の社員を対象に海外事業体や海外機関への派遣、国内関係会社への出向など、原則全員がいずれかを経験する取り組み「修行派遣プログラム」を始めている。

最大の目的は「全員がこのプログラムのいずれかに放り込まれて、苦労しながら視野を広げ、たくましさを身につける」(宮崎元専務)ことにある。

経営幹部人材育成の選抜型育成プログラムも00年からスタートさせている。次長職に相当する基幹職2級のエグゼクティブ・ディベロップメント・プログラム(EDP)の受講者は30人。その半分を海外の社員が占める。さらに、海外の課長職40人を対象にしたリーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(LDP)、日本人の課長職を対象にした「立志塾」がある。