愛着を持ってくれる人と働きたい

齋藤和政(さいとう・かずまさ)●ソノリテ代表取締役。1967年生まれ。神奈川県川崎市出身。1989年東海大学工学部卒業後、日立ソフトウェアエンジニアリング(現日立ソリューションズ)入社。2005年テプコシステムズに転ずる。09年ソノリテの設立に参画し、11年より現職。2015年の方針は、「傲岸不遜」。 ソノリテ>> http://sonorite.co.jp/

【齋藤】フィーリングで採用したと言いましたが、「一緒に働きたい」と感じられることが大事だと思うんです。それがお互いにベースとしてあれば、壁にぶつかったときも逃げないで踏ん張れるはずですから。サラリーマン時代、会社が順調なときは「この会社のために尽くす」と豪語していた人たちが、風向きが変わってリストラが始まった途端、退職金を計算し始めるのを見てきました。ああいうのは嫌ですね。それに、従業員満足度というのは満足しなくなったら終わりですから、これも当てになりません。やはりうちの会社に愛情を持ってくれる人、ファンになってくれる人と一緒に働きたい。それがエンゲージメントということなのかもしれません。

【若新】ナルシスト採用や就活アウトロー採用に関してよく聞かれるのは、採用しても組織に馴染まないんじゃないですかと。でも、馴染む必要などないと僕は思います。「馴染む」とは、言い換えれば「順応」や「適合」ということですが、それよりも大切なのは「信頼関係」です。普通の就職活動からはみ出してしまった彼らが、「こんな自分でも受け入れてくれる場所がある」と実感したとき、順応や適応をはるかに超えた深い関係性が生まれて、絆に発展すると思っています。就職活動や採用活動は今後、企業と人とのマッチングからリレーションへ、コミットメントからエンゲージメントへ向かってほしいと考えています。

アウトロー採用やナルシスト採用での時間をかけたワークショップやセッションは、そのためにあります。企業の担当者と参加者が、対話を通じてお互いの考えや感情を共有したり、共感したりすることで、お互いを理解し、認め合い、信頼を深めるための場なのです。

【齋藤】はじめて参加したときは、僕たちのような地味な会社に興味を持ってくれる人がいるのだろうかと、とても不安でした。

【若新】でも、参加者の間では一番人気でしたね。

【齋藤】若新方式を実践したんです。「さらけ出せ」とアドバイスしてくれたでしょう(笑)。僕自身、一般的な就活や採用のスタイルが嫌だなと思っていたので、同じように違和感を持っている人と話すのが楽しいんですよ。セッションでは、「いまの就活スタイルっておかしいと思うでしょ?」というところから話を始めました。僕は採用する立場ですが、みんなと考えていることは同じなんだよと、なんとかして伝えようと思いました。