なぜ民主の代表選が総選挙より重要か

政治をめぐってメディアには様々な論評が載るが、個別の問題については専門家に意見を求めるべきだろう。たとえば特定秘密保護法は、憲法学者が条文を参照しながら論評すべき事案で、法律に疎い人物が特定のイデオロギーを主張するために書いた評論は優れたものとはいえない。だから本稿でも安倍政権の政治姿勢や政策への当否は述べない。代わりに戦略論やアライアンスの視点から安倍政権のこれからを考えたい。

まず、政治は、議席数という市場の中でのシェア競争である。憲法上そう決まっている。勝利条件は「衆参両院で過半数をとる」か「衆議院で3分の2」のどちらか。委員会の委員長の配分など細かい点はあるが、基本的にはこの勝利条件を満たすように選挙マーケティングで議席獲得し、アライアンスを形成するというゲームである。現在の多党分立と衆参で異なる選挙の制度、タイミングからすると衆参両院での過半数は意外に難しく(データ上も参議院選挙は「判官贔屓」の傾向がある)、1党で3分の2以上とるのも難しいので、現実的には、アライアンスによる3分の2になる。多数派から見た時に一番理想的なアライアンスは、勝利条件に必要な最小の規模、最少の政党数でアライアンスを組むべきだから、自公アライアンスが合理的な戦略となる(ヨーロッパの連立政権の歴史も似た傾向がある)。

また、勝利条件達成のための最後の票を決める政党は、議席数以上に強い力を持つことができることから、「要党(かなめとう)」とも呼ばれる。要党の力は、議会内だけでなく、各選挙区でも発揮される。小選挙区制では最多得票数を競う戦いになるが、接戦であれば接戦であるほど、候補者を立てない少数政党への支持票が重要になるので、ここでも少ない票数で当落に影響を与えることができる。