高橋 政史(たかはし・まさふみ) 1967年、群馬県生まれ。メーカー勤務後、香港のマーケティング会社のCOO(取締役)を経て、 戦略系コンサルティングファームにて経営コンサルタント。現在、ノートスキル研修等を実施、200社、のべ2万人が受講。

「私が読者に提供したいのはテクニックじゃない。考え方のフレームなんです」

高橋さんが方眼ノートに出合ったのは2000年ごろ。日本で方眼ノートが話題になるよりもずっと前のことだ。

「マッキンゼーの元パートナーだった上司から『いきなりパソコンに向かうな!』とよく言われました。方眼ノートで思考を整理したのち、パソコンで清書すると、短時間で、説得力のある資料がつくれるようになったのです」

外資系のコンサルタントは、方眼ノートを使う。1日に10枚。3年間で1万枚。この「方眼ノートで手書きして思考を整理する」ことで一人前になるという。高橋さんの場合、方眼と出合ってから5年で、2万枚消費した。そして1つの事実に気づく。

「片づけで例えるとわかりやすいと思います。細々としたテクニックよりも、整理棚を用意して、どこに何をしまえばいいか教えれば、小学生だって片づけられるのです」

テクニックを知らなくても、フレーム(思考の整理棚)さえあればいい。まっさらな方眼に2本の線を引き、3つのエリアに分け、それぞれに、「事実」「解釈」「行動」を書き込むことにした。そうすることで、方眼ノートが単なるプレゼン資料を超え、コミュニケーションツールとなることを発見したのだ。

「仕事ができる人は、自分がすべて理解しているぶん、人に伝えるのが苦手なんです。『何でこれが理解できないんだ』と不満を持つ一方で、周りとしては『ちゃんと説明してくれないとわかるわけがない』ということになる。そしてそのことに気づけない」

指示が「行動」のみで、なぜその答えにいきつくのか部下の誰もわからない。「事実」と「解釈」さえ伝えれば部下が「行動」を取れると誤解している。そんな「天才型」の社長も、3つのフレームで構成された方眼ノートを使うことで、コミュニケーションに何が欠けていたのかを振り返ることができる。

「20年もの間、部下とのコミュニケーションに悩んでいた社長が、方眼ノートを使った途端に、なぜ伝わらなかったのか気づくことができる。だから僕は思考法が身についた今も方眼ノートに線を引いて使っているんです。天才はそんなことをする必要はないけど、方眼ノートを使えば誰でもコミュニケーションの天才になれるんです」

(小倉和徳=撮影)
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