食べる場面を繰り返し見て勉強した

高倉健は「好きな俳優はジャン・ギャバン」と言っている。そして、食べる演技も実はギャバンから学んだ。

『高倉健インタヴューズ』(プレジデント社)のなかには、こうある。

写真提供=東映

「あの人(ジャン・ギャバン)は牧師もやるし、ギャングの親分もやる。けれど、どんな役をやっているときでもあまり変わらない。セリフや動作がいいわけでもない。しかし、あの人の存在感に引き込まれてしまう。

それにジャン・ギャバンは食べる芝居もうまい。ワインとチーズのようなシンプルな食べ物を口に運び、自然な感じで食事をしながらも、観客が聞き取りやすいセリフをしゃべる技術を持っている。

あの人がものを食べる場面を繰り返し見て勉強したことがあります。

『冬の華』って映画のながて僕は出所したばかりの男の役をやったんです。

アパートのなかでひとりでトーストを焼いて、刑務所のなかでは口にできなかったジャムをふんだんにつけて食べるシーンがあるんだけど、あの芝居にはジャン・ギャバンの影響が出ています」

ギャバンの食べる演技を評価したのは高倉健だけではない。

亡くなった映画評論家の淀川長治はかつて「ジャン・ギャバンは食べるのが上手な俳優」と語っていた。

こうした情報を頭に入れて、ジャン・ギャバンの映画、高倉健の映画を見ると、また面白い。そして、誰か、ふたりの食事シーンを編集した映像を作ってくれればもっと嬉しい。(文中敬称略)