苦労人である。「必殺」シリーズなどヒット作にも恵まれたが、一方で多大な借金を背負ったことも。そんな藤田氏が「最後の仕事にしたい」とまで言い切ったのが、部下を最後まで庇い絞首刑となった岡田資(たすく)陸軍中将役なのである。
藤田まこと。1933年4月13日生まれの74歳。19歳のとき、父親がやっていた旅回りの劇団で役者としてデビューする。芸歴は50年を超えている。そして、彼は誰もがよく知る代表作をいくつも持っている。「てなもんや三度笠」(朝日放送)、「必殺」シリーズ(朝日放送)、「はぐれ刑事純情派」(テレビ朝日)、「剣客商売」(フジテレビ)……。テレビ以外に、歌手としての実力もあり、映画、舞台、ミュージカルにも出演している。
ヒット作に恵まれなかった時期は地方のキャバレー回りを経験し、バブル崩壊後には28億円の借金を背負い、苦労して完済した。藤田まことは、働いて、働き抜いて、役者としての力をつけた男である。
そんな彼が今回、主演したのが映画「明日への遺言」だ。藤田が演じたのは主人公の岡田資(たすく)陸軍中将。岡田は第二次大戦中、名古屋市を無差別爆撃した米軍機の搭乗員を国際法に違反していると処刑した軍人だ。戦後、米軍からB級戦犯に指定され、軍事裁判の結果、有罪、絞首刑となった。「明日への遺言」を監督したのは黒澤明の弟子で、「雨あがる」「博士の愛した数式」を撮った小泉尭史。原作は大岡昇平の小説「ながい旅」である。