逆境に屈することなく前向きに生き、いつのまにか時代を味方につけてきたコリン・パウエル氏と孫正義氏が4000人の聴衆を前に語りあった。根底には、「移民」という共通するルーツがあった。

移民を受け入れ「日本人」にする

コリン・パウエル氏と孫正義氏

【孫】本日はお越しいただいて本当にありがとうございます、こうして直にお話をお伺いできるのは本当に光栄なことです。

いくつか質問させてください。まず、移民政策についてです。日本ではここにきて、移民の受け入れに関する議論が高まっていますが、どうお考えですか。

【パウエル】日本には（移民を受け入れる以外の）選択肢がないと思います。若い世代の移民を受け入れ、工場やオフィスで働いてもらい、税金を払ってもらわなければなりません。同様の現象は、世界中の国々で起きています。何も手を打たなければ、私たちの世代がリタイアする頃には、私たちをサポートできるだけの労働力人口がない。

困難もあるでしょうが、日本の文化やアイデンティティを守る一方で、移民を受け入れ、彼らを「日本人」にしていくことを真剣に検討すべきだと思います。孫さんご自身も、そうした過程の中にいらっしゃいますね。

マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏と孫。1995年6月22日

【孫】初めてアメリカを訪れた1974年頃、アメリカの人口は確か2億3000万人ぐらいでした。それがいまでは、3億2000万人に増えています。

【パウエル】（移民国家である）アメリカですら、中南米系の移民が多すぎるなどのさまざまな議論があります。でも、アメリカもまた彼ら移民を必要としているのです。アメリカのどの空港、どんな街の店でも、移民が働いています。家の芝生を刈ってくれるのも移民労働者です。そして彼らの子供たちが、アメリカの大学に進学していく。

もしアメリカが移民に門戸を閉ざしたら、彼らが担っている仕事をだれがやるのでしょう。だれが税金を払い、政府の予算を支えてくれるのでしょう。