8.2016年卒大学生、青田刈りが始まる
経団連は2016年度採用から、情報提供を大学3年生の3月から、採用選考は4年生8月からと、それぞれ後ろ倒しするように要請した。
だが、今年の夏以降、水面下では早くも16年度入社組の学生の争奪戦が始まっている。
建築設計業の人事課長は「大手各社はこの夏から青田買いの場と言われているインターンシップを活用して採用活動を始めている。昨年に比べて企業の受入数や学生の参加者も多く、どこの社も学生の囲い込みに躍起になっている」と指摘する。
大手不動産業の人事課長は「来年8月の選考スタートまでにどれだけ多くの学生と接触するかが勝負。冬までに実施するインターンシップは極めて重要だ。当社も大幅に受け入れるつもりだ」と意気込む。
一応、文部科学省の指針や経団連の指針の手引きでは「インターンシップに際して取得した個人情報をその後の採用選考活動で使用できない」とクギを差しているが、まともに取り合う企業があるとは思えない。
大手建設業の人事課長は「メガバンクや生保・損保などは内定辞退を防止するのにリクルーターの動きが勝敗を分けることになる。これまでリクルーター制がなかった企業も導入するのは必至。当社も検討しており、他社の選考に参加しないようにいろんな名目で学生を拘束することもあるかもしれない」と語る。
このままいけば、特定の有名大学の学生の青田刈りで採用余力のある大手企業の内定率が上がり、8月の選考の解禁日にはほとんど大勢が決まっている可能性もある。
最終的に体力・資力のある大手企業だけが長期戦を制することになる。「今回の採用活動の後ろ倒しは、結局、勝ち組企業と優秀な学生だけが有利な施策」(建築設計業の人事課長)になってしまうかもしれない。
(参考資料:まるで象とアリ「大手vs中小」賞与格差、大拡大 http://president.jp/articles/-/13928)
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2014年を振り返ると、ビジネスパーソン、そして非正規や学生にとっては、一言で言えば、政府・企業の動きに踊らされ、混乱した1年だった。しかもその動きは来年にも引き継がれていくものが多い。その意味では、今年は働く人々の大きな転換を促す胎動の年だったといえるかもしれない。