税務当局に否認されない工夫も

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2015年以降いくら贈与したらよいかの目安は?

実際にどのくらい贈与したらよいかは、負担率を使うとわかりやすい。

図は相続税と贈与税の負担率を表したものだ。負担率とは、相続財産の額や贈与の額に対して、支払う税額の比率を示したもの。

たとえば300万円の贈与を行った場合の贈与税の負担率は6.3%。

相続税はどうか。相続人が配偶者と子ども2人で相続財産が2億円の場合、相続税の負担率は6.8%となる。相続財産が2億円以上であれば、贈与をしたほうがトクであることがわかる。

このように、贈与税の負担率が相続税の負担率を下回る範囲で贈与を行えば、トータルでの税負担額を減らすことができる。

ただし、保険料贈与プランを利用する場合には、税務当局に否認されないようにしなければならない。子ども名義で生命保険に加入し、保険料を支払っただけでは、贈与と認められない。実質的に保険料を支払っていたのは父親であり、贈与はなかったものとみなされてしまう可能性があるのだ。

ではどうすればいいか。国税庁は1983年に事務連絡を行い、以下のような場合には、「子どもが保険料を負担したと認める」としている。

(1)毎年の贈与契約書があること
(2)過去の贈与税の申告書があること
(3)父親が生命保険料控除を受けていないこと
(4)その他贈与の事実が認定できるものがあること

必ずしもすべてを満たす必要はないが、証拠は多いほうがいい。ひとつでも多くの条件を満たしておいたほうが安心だ。つまり、民法でいう贈与がきちんと行われていることが必要なのだ。

実は、保険料贈与プランには、相続対策のほかにもメリットがある。生前贈与を行う場合、親としては子どもが大金を手にして、無駄遣いをしないか心配になる。そんなことになれば、自立を妨げかねないからだ。その点、贈与した資金が確実に保険料として利用されることがわかっていれば、安心して贈与をすることができる。

以上が保険料贈与プランの基本的な仕組みだが、子どもの立場であれば、親に「贈与してくれ」とはなかなか言いにくいものだ。そんなときは父親にこう言ってみるといいかもしれない。「贈与すると相続税が安くなるらしいよ」。父親にしても高額な相続税を負担させることは望んでいない。税金が安くなるという話題には敏感なはずだ。