「管理だけができる管理職」は失格
孫子のこのような姿勢は、君主一人の指揮の限界を示してもいます。一人の人間の目、耳、鼻が捉える情報の範囲には、かならず限度があるからです。君主のみがアンテナを持ち、自己判断をする仕組みは組織が小さな時しか使えません。組織が膨張すれば、より多くの機会を発見する目と、危機を察知する耳が必要です。
孫子は、カリスマ社長のワンマン体制が正解とはしなかったのです。マネージャーにも自らの知恵を絞らせ機会を必死に探させる組織を目指しています。基本原則を教えることで自由を与え、自律性を発揮させて勝利を目指したのです。
孫子がマネージャー職に求めたのは機会主義です。機会を探しまわり、その機会を掴み勝利することです。これは現代ビジネスでもまったく変わりない不変の真理でしょう。
【孫子がマネージャー職に期待すること】
・機会を探す
・機会をすばやく掴み勝利する
・戦争のリスク面を理解する
・戦争の原則を理解する
・戦場の現実に合わせ変化する
・兵士を大切にして心服させる
・兵士に規律を厳しく守らせる
・愛情と厳しさで、兵士から200%の努力を引き出す
このリストを見ると、管理職という言葉のイメージが変わるかもしれません。管理はあくまで機会を掴み勝利するためであり、管理そのものが目的ではないからです。孫子流に言えば、「管理だけができる管理職」は失格となるはずです。最終目標は勝利であり、そのための管理が本当の業務だからです。