グラフは余計な「ノイズ」を消しシンプルに
「数字をシンプルな形に見せないと顧客を惑わせます。例えば、資料の折れ線グラフ。5本も6本も線があったら、こちらが強調したい線がどれかわかりにくい。だから、強調したい線以外のものは“その他”としてまとめて1本の線にすれば、すっきりする。ノイズを消せば、顧客も直感的に理解してくれます」
また、数字をそのまま資料に書くのなら、「絶対数」か「伸び率(%)」か、顧客に与えるインパクトをイメージすることも数字入り資料づくりの基本だと津田氏は語る。
「事実(数字)を曲げたり、改ざんしたりしてはいけませんが、自分たちのプレゼンのストーリーに合うよう数字を加工して、それを際立たせるような工夫は必要です」
ダメな社員はプレゼン資料が総花的
さらに、資料ビジュアルにおけるシンプル化の法則は、文書にも当てはまる。
「一文一文がだらだら長かったり、接続詞が多く、言いたいことがいくつもあったりする文では客は読んではくれないでしょう。同じように、資料全体が厚いのもよくない。はなから読む気が失せます。どうしても厚くなってしまうなら、エッセンスを最小限の枚数にまとめ、詳細や資料データは別添の資料として提出すればスマートです」
多くの部下の資料を長年見てきた津田氏によれば、長い文書の資料はとかく、つくる側の意見や願望ばかり書き連ねるケースが目立ち、聞く側(顧客)の願望を叶えたり抱える課題を解決したりすることにはつながりにくいという。
「結局、提案する資料は、こちらが顧客に何かをしてあげるための売り込みのツールというよりも、客のソリューションの手伝いをするためのツールなんです。そこを絶対勘違いしてはいけません」
もし、プレゼンや営業の機会が複数回あったら、最初はとにかく、相手の要望をよく聞くこと。潜在的な欲求までも感じ取り、それも踏まえて資料を修正し、再提案する。
「出世できない社員に共通していることは何度プレゼンをしても、資料の内容がずっと総花的であること。その点、優秀な社員の資料は徐々に的がしぼられていきます。資料の文の表現も簡潔になり、資料の量も少なくなります」
資料再提出のレスポンスを早くすることも顧客の好感度を高め、ひいては出世の階段を上っていくために重要ポイントとなるのだ。
1944年生まれ。早稲田大学商学部卒後、野村證券入社。東京・町田、福岡、名古屋駅前の各支店で営業を担当。86年第一事業法人部長に就き、翌87年に取締役大阪支店長に就任。96年には代表取締役専務に。以降は、各社役員のほか、ベンチャー企業の育成にも尽力。