同期の何割が課長になれるのか
でも、そうした状況が変わってきている。以前は、多くの人がミドル期には、ミドル・マネジャーになり、さらにそれ以降も昇進していった。早稲田大学の堀内慎一郎氏が行った某大手企業の社内資料を使った緻密な分析によれば、1970年代前半に新卒で入社した人たちが、早い遅いはあっても、課長に昇進する確率は約92%であり、ほぼ全員が課長までには到達していた。そして、ほかより早く課長に昇進した“早期選抜組”はより上の部長にまでいく可能性が高かったので、多くの人にとって、ミドル・マネジメントはさらなる高みへの通過点であった。つまりその先があった。また、たとえポスト的に昇進できなかったとしても、成長する会社の中で、それ以外の活躍の場があり、自分の社内キャリアがデッドエンドであるという認識を強く持つことはあまりなかったのである。
今、課長になれる確率がどれくらいかは、丁寧な研究がないので正確にはわからないが、一部では、同期の課長昇進比率が3~4割という数字が議論されている。いずれにしても、多くの企業がミドル・マネジメントポスト数を減らし、全般的な経営の効率化を目指す中で、昔よりも組織内昇進の可能性が小さくなったのは事実だろう。
さらに、もう一つの背景として、多くの企業が、短期的な収益を求めて、事業の選択と集中やダウンサイジングなどに力を入れている。また、素早い経営効果を求めてM&Aや事業の売買などを行う企業も増加した。
以前であれば、企業が戦略転換や事業再構成を行ったとき、それまでの仕事に従事できなくなった人材は他部門に移され、そこで新たなスキルと専門性を磨いて、新たな部署で活躍するチャンスがあった。企業は異動により新たな知識や能力を獲得するまで待つ余裕があったのである。