急激な大変化の際に高いパフォーマンス
まだ2008年のリーマンショックが色濃く残存する日本経済だが、とりわけ金融業界はまだまだ厳しい。そんな中で、昨今、注目されているのは「CTA商品」と称される投資信託だ。
証券関係者もこう言う。
「リーマンショック以降、世界金融は枯れ木もないという状況の中、比較的そこそこのパフォーマンスを見せた投信がCTAがらみの商品ということで大いに話題になった」
特に2009年の春に野村証券が募集した「ノムラ・マンCTA・セレクトファンド」は4月13日から22日までのたった8営業日の募集で930億円を集めて金融関係者の耳目を集めた。
そもそも、CTA商品とは何か。
原油や穀物、株価指数や為替、金利などの先物市場に特化した投資信託を指す。これらはCTAと称されるヘッジファンドが運用する。野村証券の商品は英国のマン・グループが運用する単位型投信だ。
金融分析情報会社フィスコ(東京)のチーフアナリストを務める久保田博幸氏は、CTA商品についてこう解説する。
「CTAとはCommodity Trading Advisorの略語で、日本語では商品投資顧問業者と呼ばれる先物取引の専門家のことです。この人たちが投資家から資産運用を一任されます。運用方法のメーンはトレンドを後追いしポジションを組成するトレンド・フォロー型が多いのです。精度の高いコンピュータを駆使したシステム売買が特徴的です」
そうした専門家が関わって運用する商品を、通称CTA商品と称するのだ。
日本でも、野村証券は春先の売れ行きに気をよくしたのか、夏以降もさらなるCTA単位型商品の販売を模索しているともいう。
また、他の証券会社でも大なり小なりCTA商品の販売を行ってきたが、まずまずの売れ行きで、今後も販売を検討しているようだ。
しかし、某証券会社社員は次のように話す。
「CTAが運用する投信商品は世の中が急激な大変化をするとき、つまり100年に一度起きるか起きないかという激変時にはかなりのパフォーマンスを示す。まさに2008年秋のリーマンショックのようなときにはいいわけです。数年前から、CTAが運用する商品はボチボチ知られていましたが、2008年のリーマンショック時に急に名前が浮上した。しかし、金融もかなり落ち着いてきている今年は、むしろ淡々としているという印象ですね」
先の久保田氏もこう話す。
「現在インダストリー全体の資産規模は20兆円程度といわれていて、2000年以降は順調に規模が拡大してきました。しかし、2008年からマドフ事件などの影響によるオルタナティブ投資の見直しの中では、流動性の高いCTAが率先して解約される傾向にあります。2008年のパフォーマンスのよさが喧伝されたから注目度はあるものの、2009年は苦戦しているとも聞いています」
別の証券関係者は「CTA運用商品は、中身がブラックボックスで読み切れない」とも。
しかし、そうはいっても米国は依然サブプライムローンの後遺症から完全に立ち直ってはおらず、むしろ失業率は2008年よりさらに悪化、2ケタ台に突入した。今後何が起きるかわからないだけに超リスク分散型CTA商品から目が離せないのも事実だ。
※すべて雑誌掲載当時