桂小五郎は自分の出番を待った

吉田の同志、桂小五郎も左遷→復活の人である。そもそも桂は、志士たちのあこがれ的な存在だった。だが、禁門の変（長州藩vs朝廷を固める会津藩、薩摩藩らの諸藩の間で起きた戦い。長州藩の敗北）をきっかけに、志士のチャンピオン、長州藩の星と呼ばれた人物は、敗残の亡命者に成り下がる。

長州藩の考えに賛同せず、禁門の変の戦いで行動を共にしなかった桂に対する仲間からの風当たりは強く、また幕府からは長州藩士ということで敵視された。四面楚歌の状態で、身を隠すほかなかったのである。

桂の敗者復活の鍵となったのが親友の高杉晋作だ。高杉は長州藩内の実権を握ると、まだ必ずしも桂に好意的でなかった藩内にこう言って、桂を探し出したと言われる。

「小さなことにこだわるな。日本のことを考えて、桂に藩政府を任そう」

その後、桂は木戸孝允の名で藩政府の要職につくことになる。

童門さんはこう語る。

「どんなに厳しい状況に置かれても、徹底して自分の出番を待っていたのが桂という男でしょう。徳川家康に似て、社会の動き、世の中の潮流を見抜く鋭い力がありました。やがて自分の出番がくるという考えは、自分を信じ切る気持ちが強かったと言い換えてもいいかもしれません」