長期間視力が安定し、トラブルが少ない

一方、近視矯正法としてお馴染みなのが、エキシマレーザーで角膜を削り、視力を矯正するレーシックだ。一般的に、レーザーで角膜の一部を切り取って作ったフラップ(ふた)をめくり、レーザーを照射して近視・乱視を矯正し、フラップでふたをする。

レーシックでは時間が経つと視力が悪化しメガネやコンタクトレンズが再び必要になることがあるが、ICLでは長期間視力が安定し、レーシックで発生しているトラブルが少ないのが人気の理由。レーシックでは、フラップがずれて眼が見えなくなるトラブルが施術後かなり経ってからでも発生する。

また、フラップをつくるときに角膜の知覚を司る三叉神経を切断してしまうのでレーシック後はドライアイになりやすく、光の調節が難しく暗いところで見えにくくなる視覚障害を生じる人もいるが、ICLでは三叉神経が温存でき、そういった障害も起こりにくいそうだ。レーシックを受けた米軍の兵士の中には夜間の戦闘ができなくなった人もおり、職業や生活スタイルによっては切実な問題を生じるリスクがある。

ICLの最大のメリットは、眼内レンズを取り出してもとの状態に戻せること。年をとって白内障になったら再手術を受け、眼内レンズを入れ替えればいいわけだ。もしかしたら、将来的に老眼を矯正する夢の眼内レンズだって開発されるかもしれない。レーシックの場合は、たとえトラブルがなかったとしても、将来的に白内障になったときには正確なレンズ厚の計算ができないため、手術を受けてもクリアに見えなくなる恐れがあるという。レーシックとはタイプの異なるレーザーを使い、フラップを作らなくて済むSMILE(スマイル)と呼ばれる近視・乱視矯正手術も出てきているが、レーザーで削った角膜をもとに戻せない点はレーシックと同様だ。