大手予備校の代々木ゼミナールは、全国27カ所の7割を超える20校舎を来春閉鎖し、7カ所に削減する事業縮小に踏み切る。運営する学校法人高宮学園(東京都渋谷区)が8月25日、40歳以上の職員を対象にした400人規模の早期希望退職募集と大学受験生向け全国模擬試験廃止などを併せて発表し、代ゼミのリストラに大なたを振るう。
「大学受験バブル」華やかなりし1990年代はじめ、受験生に圧倒的支持を得た名門、代ゼミの挫折は、少子化の進展から数字上、進学希望者すべてが入学可能な「大学全入時代」の投影とも映る。しかし、「代ゼミのケースは、バブル全盛時の私立文系志望者、浪人生主体のビジネスモデルを転換できなかった末の転落」と、代ゼミ固有の問題を指摘する専門家は多い。
事実、デフレ経済の長期化を反映し、受験生の志望は国公立、理系にシフトしている。さらに、92年に約42万人を数えた浪人生は直近で約5万人に萎んだ。定員割れが続出する私大が推薦枠拡大に動き、現役進学者増加に拍車がかかっているのも現状だ。
その意味で、代ゼミの強みは時代遅れとなったばかりか、逆に弱みと化し、受講生の減少を招く地盤沈下に追い込まれた。学習塾のSAPIXを買収、小中高一貫体制を築いたものの、難関大学受験するSAPIXの生徒は代ゼミを敬遠。本丸の不振をカバーするには至らなかった。
代ゼミが一角を占める予備校「御三家」のうち河合塾は国公立、理系の強さが売りで、駿台予備校は難関大受験に定評があり、時流に乗った拡大路線を進める。このほか、大手では東進ハイスクールが現役生向けネット配信で急成長しており、受験構造の変化を読み違えた代ゼミの“自失”は否めない。
半面、代ゼミの校舎は「駅前一等地」がほとんどで、閉鎖後は高宮学園が不動産事業に注力できると皮肉る向きも多い。現に、JR名古屋駅前の跡地に建設する地上23階建てビルには、名鉄不動産がビジネスホテルを開業すると8月28日発表したほどだ。
受験ビジネスをめぐっては、学研ホールディングス、栄光ホールディングスが8月29日、資本提携強化を発表したように、少子化が背景の細る市場への危機感から、一段の業界再編、事業変革を迫る圧力が増してきている。