リバネスは異色の知能集団である。小中高校へ最先端科学の実験を届ける出前授業を中心に、研究受託、企業の研修、養豚、植物工場など200以上のプロジェクトを同時に動かしている。創業者の丸幸弘社長自身も農学博士であり、才気を感じさせる異色の経営者だ。
小中高校への出前授業からスタート
誰も真似できない事業や、新しい経営スタイル・思想を持った進化する中小企業をここでは「中小企業2.0」と呼ぶ。筆者は過去の取材経験で少なくとも500社以上の中小企業の経営者から話を聞いている。その中で、中小企業2.0と呼ぶにふさわしい企業を紹介し、日本の明日を創るきっかけとなる胎動を感じ取って頂ければと思う。
中小企業2.0の代表として真っ先に取り上げたいのがリバネスである。創業者の丸幸弘社長は、1978年生まれの36歳。まさに新しい企業スタイルと思想、その結果としての事業を創造し、新市場を開拓している。
社会貢献を掲げる20~30代の若手経営者が最近、増えてきたが、思いとビジネスがなかなか結びつきにくく、空回りをしているケースも少なくない。
だが、丸は才気を感じさせるとんがった話しぶりとは裏腹に、着実に事業化への軌道を描き、乗せるだけの意志と実行力、粘り強さを持っている。
リバネスの事業概要をひと言で語るのは難しい。現在、派遣社員を含めて44名の従業員を抱え、200以上のプロジェクトを同時に進めている。社員は主に理系の出身者で、博士が6割を占め、それ以外は修士号を持つ。学部出身者は原則採用しない。丸自身も東京大学大学院で農学博士号を取得している。
事業の中心は創業から行っている小中高校へ最先端の科学実験を届ける「出前授業」である。大学や企業の研究者たちが学校を訪れ、子供たちと一緒に実験の面白さを体験してもらう事業で、年間300回以上、これまで延べ約8万人の子供たちに提供した。
現在、出前授業は「教育応援プロジェクト」の名で、中小から大手企業の研究者が講師役となり、産業界と教育界をつなぐパイプとなっている。リバネスはこうした授業のコーディネートを行っている。
子供たちは正直に反応するため、研究者たちにとってもわかりやすく楽しく伝えるための教育の場としても活用できるということで、出前授業を使った研修事業も生まれた。
この出前授業に刺激されて、大学の理系に進み、就職が決まった後に、お礼のためリバネスを訪ねてきたり、同社にインターンシップとして参加する若者も出てきた。