小学生社長もプロデュース
こうした出前授業の中から、優れたプログラムを表彰する「教育CSR大賞」をリバネスが作った。2012年の大賞では協和発酵キリンが「リサーチベースドエデュケーション(RBE)部門特別賞」を受賞した。
同社が行っているのは東日本大震災の被災地復興支援のため、福島・宮城・岩手3県の高校の生徒と2年にわたってバイオ関連の研究を行うプロジェクトである。福島の高校とは植物工場に適した育成培地の研究、宮城の高校とは魚醤製造に関与する微生物の研究、岩手の高校とは津波被害を受けた土壌から新種のオイル生産藻を見つけ、産業に結びつけようというものだ。同社では専門家や機材・物品も提供し研究を全面サポートする。
リバネスでは、高校生による論文執筆を前提とした研究活動をRBEと呼び、丸は「RBEを20年間続ければ、ノーベル賞を受賞する人材も現れる」と信じている。
確かに大津波によって海底の藻や微生物が打ち上げられており、その中から新種が発見される可能性はある。津波という負の遺産を科学や産業の発展に転換させられれば素晴らしいことだ。丸は、こうした発想や姿勢を大切にする人物である。
丸は小学生社長のプロデュースも行っている。化学の元素記号が書かれたカードを組み合わせて分子を作り、その数を競い合う「ケミストリークエスト」というゲームを小学校3年の時に考案した米山維斗(ゆいと)は1999年生まれの15歳。小学校6年生の時に丸と出会って、リバネスからゲームを出版し、同年ケミストリー・クエストという会社を設立した。当時の年齢では法律上、代表権を持てないので、父親を代表に据えたが、今年15歳になった彼は、自ら代表取締役社長に就任し、同社の活動を広げている。このゲームはすでに7万部以上も売れるヒット商品になっている。
丸は近著『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)で米山のことに触れ、「ケミストリークエストの世界大会をやりたい」と米山が言ったことに驚いて応援したくなったと述べている。丸はパッションがあればイノベーションが起こるというのが持論で、小学生だろうと高校生だろうと年齢で人を判断しない。