なぜ、無口な職人に心を動かされるか

対人関係においては「モテたい」、仕事においては「昇進したい」という気持ちが強い人は、具体的な行動やスキルを改善していくべきだと思います。

しかし、「アニメのキャラしか愛せないからモテなくてもいい」「今の仕事で偉くならなくてもいい」と思っている人には、無理やりその人の意に反して、自分を変えさせようとしなくてもいいと思います。人には向き不向き、得意不得意なことがあります。なんとかしなければと無理に改善しなくても、これまでやってきたことを続ければいいのです。継続していくと何かしらの力が身について、本人の自覚がないままかもしれませんが、何かその人なりの魅力を醸し出すこともあります。

対人関係が苦手なら、人とあまり会わずに済む仕事を選ぶべきですし、組織であっても強引な教育を施すよりも適材適所を心がけたほうが絶対にいい。あるテレビ番組で、リポーターが、京都の茶釜職人の職人技をリポートしていたときのことです。鋳型を作って彫刻刀で彫って、鉄を流し込んで1個ずつ時間をかけて丁寧に作っていく。日本のよき伝統を伝える番組でした。

しかし、リポーターとのコミュニケーションが噛み合わないのです。リポーターが質問をしても、職人は黙々と茶釜を作っている。「これは生き甲斐ですよね」と問いかけても「そうじゃなくて、あれだよ、あれ」と返答。リポーターは困惑していました。しかし、会話には慣れていない職人のその不器用さから、無口で純朴な職人気質が私には伝わりました。自分の得意分野をつくること。そして、自然体でいること。それが人からの評価を高める場合はたくさんあります。

全員に好かれようとするのは所詮無理な話です。モテたいのにモテない人は、ちょっと恥ずかしいけどビデオモニタリングを。別にモテなくても構わないという人は、地道に自分の仕事を積み重ねることです。

桜花学園大学大学院客員教授、専門行動療法士・臨床心理士
奥田健次

兵庫県生まれ。発達につまずきのある子とその家族への指導のために、全国各地からの支援要請に応えている心理臨床家。著書に『メリットの法則―行動分析学・実践編』など多数。
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