もう1冊あげるとすれば『平家物語』。“祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり”で始まる作品です。書かれたのは1300年頃。時代が遡る分、難解さが増すため、現代語訳を併記したものを選びました。まず原文を読んでみて、わからない部分が出てきたら、一度推理し、現代語訳で確認する。そんな読み方をすればいいのではないでしょうか。
描かれているのは平家の栄華と没落ですが、時代に抗い、夢を追った男の話に鼓舞されます。悲恋譚には落涙することもあります。
歴史では出来事しかわかりませんが、古典を読むとその時代を生きた人の心情を知ることができます。それも古典を原文で読む楽しみのひとつです。これは私見ですが、同じ日本人でも昔の人のほうが喜怒哀楽の感情が豊かだったのではないか、と感じることが多々あります。読者のなかにもその純粋さに薫染される方もおられるはずです。
そうして親しんでいくことで古典は少しずつ近い存在になっていくと思います。より読解力をつけるには語彙は多いほうがいいでしょう。『読んで見て覚える重要古文単語315』は受験生のために書いた参考書です。単語は何を、さらにどう覚えるのかに心を砕きました。辞書代わりにも使えます。
●オススメの3冊
『日本永代蔵』
(井原西鶴/角川ソフィア文庫)
――テンポのよい文章が読みやすい江戸中期の経済小説。金を儲ける心得の原点は今も昔も変わらない。
『日本永代蔵』
(井原西鶴/角川ソフィア文庫)
――テンポのよい文章が読みやすい江戸中期の経済小説。金を儲ける心得の原点は今も昔も変わらない。
『平家物語』
(角川ソフィア文庫)
――平家の盛衰を通して描く無常観。冒頭部分は誰でも知っているが通読した人は少ないはず。古人の心情が理解できる。
『読んで見て覚える重要古文単語315』
(武田博幸、鞆森祥悟/桐原書店)
――古文を読むための基本的な単語をわかりやすく解説。
(相澤光一=構成 奈良岡 忠=撮影)