「嫌い」という感情は悪ではない

上司が部下のくだらないジョークにイライラしたり、部下が机で口笛を吹くのに顔をしかめたりすることは確かにあるだろう。だが、部下に対して好意とはほど遠い感情を持つのは最も悪いことというわけではないようだ。「パフォーマンスの観点からは、自分が管理している人間を好きになりすぎるほうが、好きにならない場合より大きな問題だ」と、サットンは言う。上司が引きつけられる部下は、おそらく如才なく振る舞い、上司にこびへつらい、悪いニュースを伝えない部下だろう。だが、新しい発見を刺激したり、チームを成功へと駆り立てる力になったりするのは、往々にして上司を怒らせたり、上司に楯突いたりする部下だ。「異なる視点を持ち、異議を唱えることを恐れない人々が必要なのだ」と、サットンは言う。「組織がばかげたことをするのを防いでくれるのは、そのような人々だ」。

それでも、嫌いな人間と絶えずかかわっていると、毎日がとても長く感じられることがある。自分のフラストレーションに対処する方法を学ぶことがきわめて重要だ。その部下がどれほど癇に障るかではなく、自分がなぜこのように反応しているのかに目を向けよう。「彼らがボタンをつくったわけではない。彼らはボタンを押しているだけなのだ」と、ダットナーは言う。彼が勧めるのは、自分自身に次のように問いかけることだ。

・問題はその部下本人なのか、それともその部下が思い出させる誰かなのか?

「有能な部下が意地悪な伯母さんに似ていて、突然その部下のすることがすべて気に入らなくなることがある」と、ダットナーは言う。

・私は自分がこの部下に似ていることが嫌なのか?

たとえば、部下がしょっちゅう人の話に割って入り、上司が自分もそうであることを気にしているとしたら、その上司は必要以上に強く反応してしまうかもしれない。

・その部下は自分が快く思っていない集団に属しているか?

この問いは多くの偏見や場合によっては法的問題にまで踏み込むものだが、自分が持っているかもしれない隠れた偏見について、自分に正直になる必要がある。「自分はこの人物をどんな集団を代表する存在とみなしているのかを解明する努力をしよう」と、ダットナーはアドバイスする。

「それを解明するために心理療法まで受ける必要はないが、どのような状況や特性が自分を最もいら立たせるのかについて自分に正直になろう」と、ダットナーは言う。自分の感情を悪化させる引き金を突き止めたら、自分の反応を和らげたり、変えたりすることができるかもしれない。忘れてはならないのは、誰かに変わってくれと頼むより、自分のものの見方を変えるほうがはるかにたやすいということだ。