なんとかうちの子にも、早起きして勉強する習慣をつけさせたい――。そう思っていろいろやってみたけれど、なかなかうまくはいかないもの。

「ほら、早く起きなさい」

「お母さんだって眠いんだから!」

親のほうがカリカリするばかりで、子供のほうはどこ吹く風。結末は、毎朝、険悪なムードになって1日のスタートを切るはめに。

「脳科学の観点からすると、そうしたやり方はすべて大間違いです」

こう指摘するのは、脳神経外科医の林成之(なりゆき)・日本大学大学院総合科学研究科教授だ。「早起きさせて勉強をさせたいのなら、脳のしくみと本能を踏まえるべき。ガミガミ言って起こしたり、早起きを強制するやり方は、脳科学からみると全くの逆効果です」

林教授は長年にわたり脳蘇生医療の最先端で活躍、脳低温療法などの画期的な治療法を編み出してきた。そのかたわらで、脳の一部に損傷を受けた多数の患者の治療経験から、思考や記憶、意識や感情などが脳の中でどのように生まれるのかを研究してきた脳科学の第一人者でもある。研究の成果を踏まえた、「意欲」や「集中力」、「勉強法」に関する著書も多い。

入ってきた情報に脳はまず、好き・嫌いのレッテルを貼る

では、林教授が言うところの、「脳のしくみと本能」とは何か。

まずは「脳のしくみ」から。林教授が説明する脳のメカニズムは、脳のさまざまな部位が互いに協調しながら、情報のバトンを渡していくリレー競技のようだ。何より重要なのは、脳が外部から入ってきた情報を処理するプロセスの中で、感情が大きな役割を果たしているということだ。