──リーマン・ブラザーズをはじめとした金融機関の連鎖倒産で、世界的に金融不安が広がっています。投資家として、今回の金融危機をどうご覧になっていますか。
サブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅融資)によってかつてない規模に膨らんだアメリカの信用バブルがはじけたのです。今回のことはアメリカだけでなく、世界の歴史に残るほどに深刻な事態だと言っていいでしょう。この余波は、今後も長く続くはずです。日本のバブル崩壊や1998年から始まったロシアの財政危機も、回復まで10年ほどかかりましたからね。
アメリカは今、コントロールを失っています。かつて債権国だったこの国は、今や世界最大の債務国になってしまいました。債務は13兆ドルにもおよび、借金をしながら国を回しているという有り様です。非常に憂慮すべき状況ですが、政府は有効な解決策を打ち出していない。
米国中央銀行のFRB(連邦準備制度理事会)の度重なる利下げによって、事態はさらに悪化しました。アラン・グリンスパンとベン・バーナンキというFRB議長が二代続けて経済基盤を損ね、米ドルを弱体化させる政策を取り続けたのです。過去の歴史を振り返っても、この政策で長期的に経済が回復した例はありません。住宅の信用バブルに関しても、私は数年前から何度も警告を発してきましたが、ほとんどの人は耳を貸さなかったのです。
これまで米ドルは世界の基軸通貨でしたが、今後はその地位を失うでしょう。時期は明言できませんが、この流れは不可避だと思います。ちょうど、60年代にイギリスのポンドが失墜したときの状況とよく似ています。私はアメリカ国民ですから、ドルの悪口はあまり言いたくないのですが(笑)。