株を買うとしたら、今は日本株式がよいだろう

──米ドルの次に基軸通貨となるのは何でしょうか。

それはわかりません。ユーロかもしれないし、中国の人民元かもしれません。いずれにせよ、変化の兆しに気づき、時代の潮の変わり目を見抜いた人が得をするのです。ポンドから米ドルに基軸通貨が変わったときも、損をした人と利益を上げた人がいました。

マーケットは常に変化しています。たとえば、今まで堅実な投資先と考えられていた債券は、今後、最大で2~5%程度のリターンしか得られない商品となるでしょう。私はあまり株を持っていませんが、もし、株を買うとしたら、現時点ではアメリカ株よりも日本株を選びます。日本経済も問題は山積みですが、アメリカ株よりは魅力がありますね。

正直なところ、今は様子見の時期です。先週、中国と台湾の株をほんの少し買いましたが、あとは“ウインドーショッピング”をしています。

──ロジャーズさんは、サブプライム問題が起きることも予見しておられました。こうした変化を察知するには、日頃からどういう努力が必要でしょうか。

今回の住宅ブームは明らかに異常でした。アメリカで過去にあんな事態が起きたためしはなかった。頭金もなく、仕事にも就いていない人が、何軒も家を買えたんですから! バブルは必ず崩壊する。過去の歴史を振り返れば容易にわかることです。

投資家として成功したいなら、投資の神様と言われている人々の話を聞くよりも、歴史や哲学を学んだほうがいい。そのために欠かせないのが読書です。歴史書や哲学書から歴史的教訓に学び、物事に対する洞察力を磨く。そうすれば大局をつかむことができるし、将来の変化も予測できる。歴史は繰り返すのです。

自分の目で世界を見て回ることも大切です。私は2度世界一周の旅をして(1回目はBMWのバイク、2回目は特注のベンツで116カ国を回った)、冒険投資家と呼ばれていますが、今、その経験が大いに役に立っている。「次は中国の時代が来る」と確信したのも、88年にバイクで中国を横断し、そこに潜む可能性を肌で感じたからです。

テレビや雑誌、インターネットで得られる知識や情報に頼ってはいけません。賢明な投資家であるためには、自分自身で経験し、自分の頭で考えること。だから私はテレビを見ません。若い人はインターネットに依存していますが、ネット上の情報で「世の中を理解した」と信じている人の視野は狭い。投資で成功したいのなら、それを心に留めて、自分の眼力を磨いてください。

──『中国の時代』という本も書いておられますが、北京五輪後、中国株は、昨年から平均6割以上下がっています。今が買い時だという人もいますし、「リスクが高い」と分析する人もいますが、いかがですか。

私は長期的な中国経済の見通しを楽観しています。今後30年、中国が有望な投資先であることに変わりはない。近い将来、中国経済はアメリカを抜いて世界最大の規模になります。19世紀は英国、20世紀は米国の時代でしたが、21世紀は中国が世界の中心になるでしょう。

中国には資本主義経済が浸透しています。人々は勤勉に働き、収入の約35%を貯蓄や投資に回す。そんな国が成長しないわけがありません。それに比べ、アメリカ人の貯蓄率はたったの2%ほどです。「中国は投資の対象にならない」と言われていた時代から中国への投資を続けた結果、私は700%ものリターンを得ることができました。まず、世間の常識を疑い、自分の眼力を信じる。それが私の投資哲学です。

最近では、中国の農業関連や、航空会社をはじめとする観光業のインフラ、太陽光発電などのエネルギー関連や水資源に関する企業に注目しています。特に、水処理に関連する産業には大きな可能性がある。安全な水の供給は、今の中国にとって大きな問題ですからね。

中国以外の国では、ブラジルや台湾、モンゴルなどが興味深い。広大な国土を持つモンゴルには天然資源が豊富に眠っています。世界的な資源不足を背景に、今後さまざまなビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。