内向きになった国に明るい未来などない

──日本や日本の投資家に対するアドバイスはありますか。

過去50年間、日本人は勤勉に働いて繁栄を築き、世界第2位の経済大国の地位にのぼりつめた。が、今後50年間、同じような成功を享受できるとは思えません。特に少子化は大問題です。少子化に有効な手も打たず、移民も受け入れなければ人口が減って国民の生活水準は下がる。そして負債だけが膨らんで、若者がそれを払い続けなくてはいけないのです。

これほど自由に外国に渡航できる国でありながら、最近の日本の若者は海外に目を向けず、パスポートすら持っていない人も多いとか。何ということでしょう。

かつてアジアで最も豊かな国であったはずのビルマ(現ミャンマー)や、元英国領で一番発展していたガーナも、内向きの政策を取ったとたんに没落していきました。豊かな国も鎖国的な政策をとれば必ず衰退すると歴史は証明しているのです。

私が住むシンガポールは移民を受け入れて成功しました。日本も無用な道路や橋に莫大なお金を費やすのではなく、子どもたちの教育や移民政策に本気で目を向けるべきでしょう。個人投資家も、国内だけでなくほかの国にも注目してほしい。全般的に投資は冷え込んでいますが、投資すべきものは必ずある。30年代の大恐慌のときも、賢い投資家は儲けることができたのです。

私はアメリカ・アラバマ州の片田舎で生まれました。実家はあまり裕福ではなく、お金を儲けることで「自由になりたい」と夢見ていた。だから、5歳から空き缶拾いなどの商売を始めて、投資家となったのです。おかげで、望んでいた自由を得ることができましたし、世界の動きがわかるようになりました。今は、自らが立てた仮説の正しさが、リターンという形で証明できることにおもしろみを感じています。

投資で成功することはそれほど簡単なことではありません。ですが、自らの頭で考え、調査し、よく理解しているものに投資することが成功への近道だと思います。

(澁谷高晴=撮影)