不愉快な行動原理だけに囚われるな

とてもつき合いづらい人たちに思えるが、それだけが中国人の顔ではないと古田さんはいう。

習近平主席。1953年生まれ。趣味はサッカーと囲碁。(時事通信フォト=写真)

「中国人には兵法とは別に儒教の教えが根づいています。身内はこのうえなく大切にするということです。関係のことを中国では“グワンシ”と言いますが、これは中国人を理解する最も重要なキーワード。濃密な人間関係・グワンシを築き、身内である自己人の領域に入り込めば、信義に厚く約束は必ず守る君子を見ることになります」

「外人」には兵法で接し、「自己人」には儒教で接するのが中国人なのだ。では、どうすればそうした濃密な人間関係を築くことができるのだろうか。

「中国人には身内の者と分かち合うという発想があります。円卓を回して大皿料理を分け合うような感覚を持っていますから、日本では露骨と思われる贈り物もグワンシ樹立に寄与します」

贈り方にもより有効な方法があるという。相手の趣味趣向をあらかじめ調べ、好きなもの、欲しいと思っているものを贈る。日本人にはエグく感じられる行為だが、そうした相手を心から喜ばせようとする計略は決して否定的でない。むしろ誠意があると評価するのである。

「中国人は一番身近な家族に高い価値をおきます。本人ではなく奥さんや子供さんに贈ることも効果は絶大です。贈られた人が喜べば、相手との距離は少しずつ縮まり自己人の領域に入っていけるはずです」

第三十五計に「連環計」がある。次々に計を繰り出すという意味だ。相手との距離が近づいたら、連絡を密にとり、何度も会い、食事をともにする。そうして深い人間関係・グワンシを築いていくことが大事なのだ。

また、日本と大きく異なるのが公私の感覚。

「日本人は“公”と“私”を分けて考えますが、中国の“公”の感覚は日本とは相当違います。あるのは一族郎党がものを分かち合う“共”の感覚。汚職が結果的に多くなるのも、身内に分け与えることに、高い倫理観をおくことがあるからです」

中国人は日本人とは異なる考え方をすると理解すると、尖閣諸島の国有化をきっかけに起きた破壊行為など激烈な反日暴動の構図も見えてくる。