多すぎる選択肢は、決定の妨げになる

「ジャムの法則」はご存知の方もいらっしゃるだろう。カリフォルニアのあるスーパーは、オリーブオイルだけでも75種類を取りそろえる高級スーパーマーケットだ。ここで研究者のシーナ・アイエンガー氏とマーク・レッパー氏は、ある週は6種類のジャム、別の週には24種類のジャムを並べて購入反応をみた。24種類のジャムが並べられたときは買い物客の60%が試食したが、6種類では40%しか試食しなかった。ところが、24種類を並べた棚では3%の人しか購入せず、6種類のときには30%が購入するという逆転の現象が起こったという。まとめると、こういうことだ。

      試食購買
ジャム24種類 60%   3%
ジャム  6種類 40%   30%

つまり、たくさんの選択肢が必ずしも相手の行動を促すとは限らず、たくさんの選択肢は人の興味は引くものの、むしろ意思決定の妨げになるという結果になった。「私はこのジャムが欲しい」と、自分の希望をすぐに把握できる程度数のほうが売り上げにつながったのである。

アイエンガー教授はこの実験で「豊富な選択肢は売り上げを伸ばす」というお店の方針を実証しようとしたが、逆に「選択の難しさ」を伝えることになった。たくさんあると、人は選べなくなるというわけだ。

ありあまる選択肢は合意を導くよりも、むしろ相手の迷いや後悔を生み出しやすく、決定の妨げにすらなってしまう。そのため、用意する選択肢が効果を生むためには「対象に合わせた絞り込みのバランス」が必要になるのである。

これに関連してTEDのプレゼン「選択のパラドックス」で、バリー・シュワルツ氏はこんな提案をしている。