女性目線の活用と部門利益優先の排除


紫外線カット実証実験では、「UVベールプレミアム」は紫外線にほとんど反応しない(下)。

しかし、自動車メーカーの技術者は男性が多い。女性ほど紫外線による日焼けに関心の高くない男性に対して紫外線カットの効果を理解してもらえるかは大きなポイントだった。そこで小島さんは効果の「見える化」を考えた。紫外線を感知すると紫色に変色するUVチェッカーを用いた「デモ機」を作り、99%カットのガラスを使って実験して見せた。

また、濱野氏はこう語る。「男性エンジニアだけではなく、女性をターゲットに説明しました。たとえば女性エンジニアが連れてきてくれた他の女性社員や女性マネージャーに説明したところ、大変興味を示してくれました。そうした人たちの共感が上層部にも伝わり、採用につながったと感じています」

この紫外線99%カットの自動車向けガラスで旭硝子は世界トップシェアを持つ。成功の秘訣は、女性目線の活用と、部門利益優先の考えを徹底的に排除する取り組みと言える。

旭硝子は「ガラス」「電子」「化学」の社内カンパニーを持つが、これは担当する製品ごとの区分。実際にビジネスを展開する際には、製品ごとではなく、「快適な生活・空間」「クリアな映像・通信」「クリーン&グリーンなエネルギー」の3つの顧客軸を重視する。こうした発想も「UVベールプレミアム」誕生の背景にある。

また、社内カンパニー制を敷いている旭硝子では、その壁を超えて技術や人材を結合させて新製品を開発、新たな顧客を開拓していくための人事制度も2010年から新たに導入した。これは「人材の見える化」とも言える。グローバルに在籍するホワイトカラー約14000人のうち6割程度を「スキルマップ」に登録。技術系は「ガラス材料」「樹脂設計」などの26分野、事務系は「営業マーケティング」「会計」などの13分野の専門性の高いスキルがある。「スキルマップ」に登録された人材を部門の壁を超えて起用していこうという考えであり、社内で活用できる人材を幅広く掘り出していく狙いもある。

(旭硝子=写真提供)
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