意外と怒りっぽい米国の上司たち

米国というと人権について敏感なお国柄だけに、パワハラ訴訟を避けようとしていいたいこともいわない上司が多いのではと思いきや、実情はかなり違うようだ。米国生まれの“怒る技術”の日本国内での普及を図っている日本アンガーマネジメント協会の代表理事を務める安藤俊介さんは、「米国では、小さいころから自己主張することは善という教育を受けているせいか、怒りっぽい上司が多い。罵倒することなんて日常茶飯事です」という。

日本人は自分の気持ちを内にしまい込みがちで、先のようなきちんと叱りつけて部下の行動を直せるガミガミ上司はどの会社でも少数派だ。その一方で、自分ではきちんと叱っているつもりでも、部下は自分の思うとおりにはなってくれずに思い悩んでいる上司が少なくない。そうした上司は次第にストレスをため込み、知らないうちにいつも不機嫌な表情を浮かべている“イライラ上司”へと変身していく。

「結局、そうした上司は心のどこかで『人間はいえば変わるもの』と考えています。でも、人間は一言いっただけでは変わりません。その勘違いがイライラの原因になっているわけです。また、価値観の多様化に伴う個性の尊重が叫ばれるようになり、『部下の個性なのだから仕方がないか』と諦めがちなことも多いようです。しかし、価値観の受け入れと、上司として部下に対していうべきことをいうのは別次元の話。米国人の上司のように、怒ったらいいのです。ただし、怒り方のルールは守る必要があります。それさえ守っていれば、パワハラにはなりません」

安藤さんがいう怒り方のルールがアンガーマネジメントであり、米国ではフォーチュン500社に入るようなトップ企業のエグゼクティブたちがマスターしているそうだ。アンガーマネジメントでは、叱りたいという気持ちは何かを伝えたいというパワーがあるから生まれるものと捉える。そして、叱りたいのに部下に遠慮して叱らず、組織が硬直化するよりも、侃々諤々の議論をしたり、叱ったり、怒ったりしている組織のほうが生産性はアップするという考え方を持つ。