ビジネスメール講師の平野友朗氏も「原則として、メールでは叱らないほうがいいでしょう」という考えだ。

たとえば、部下の電話の応答がよくなかったので注意をしたい。そういうときメールを使うと、部下のほうは「直接声をかけてくれないのはなぜだろう?」と疑心暗鬼になる。やる気がそがれ、仕事のパフォーマンスは低下するというのである。

一方「メールでほめる効果はたいへん高い」と平野氏はいう。

部下から報告が上がってきたときに、それでおしまいにせず「よくやったね!」と一言だけでいいから返信する。それによって部下の承認欲求に応えるのだ。

「ちゃんと見てくれていたんだな、と感じてやる気が出てくるのです」

ところで、メールで叱ってはいけないのは、口で叱るよりも後味が悪くなるというのが一番の理由だが、平野氏によれば、もうひとつ深刻な問題がある。

「メールでは、本気さや熱意が伝わらないからです」

紙に手書きをするなら、怒りのあまり殴り書きの文字を書きつけることもできるだろう。しかしテキストベースのメールには、そういった極端な感情を込めることができない。

基本的に叱るとか激励するといった、感情が介在するコミュニケーションについては、対面で伝えるのが効果的だといわれている。その次に効果的なのは電話で話すこと。

一方、メールはロジカルで事務的な情報伝達に向いている。なんでもメール頼みにせず、使い分けをするべきなのである。

(小原孝博=撮影)
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