大企業で求められるのは「改善」
思えば、こうしていま自分が会社の経営者をしている、というのは何だか不思議な気がします。僕は大手取次会社のトーハンに約7年間勤めて、それからDeNAに転職しました。当時は自分が起業することになるとは思っていませんでした。
DeNAにきてまず驚いたのは、何といってもその自由さでした。なんてフラットでオープンな会社なんだろう、って。裁量と責任の両方がとても大きいんです。「こういうことやりたい」と言うと、「どうぞ、どうぞ」とやらせてくれて、結果を出せばちゃんと評価してもらえる。「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」を大切にする社風には刺激を受けました。
これはその人の志向性によって好みが分かれると思いますが、トーハンのように規模が大きく、すでにビジネスモデルが固まっている会社では、「改善」こそが求められる仕事なんですね。数パーセントの積み重ねが大事で、どんなに優秀な人でも大きな仕事をするためには長い時間がいる。
一方でベンチャーは今の社会で当然とされている前提条件を疑って、パンドラの箱を開けるみたいに何かを始める。大手企業から見れば仕組みもないし仕事は荒いけれど、代わりに想像力をたくましくして、来年や再来年に2倍成長するにはどうしたらいいかを考えて前に進もうとするわけです。僕自身は「自分の動いた結果がこういうふうになってる」という感覚が常に抱けるベンチャーの働き方に、やりがいを感じるタイプだったということなんだと思います。