周囲に「社内情報を企業情報に、企業情報を業界情報に、業界情報を社会情報にしよう。これができたらメディアの反応は全く変わる」と呼びかけた。社内情報では、社内報にしか書けない。それが企業情報になれば、外へ発信できる。ただ、発信できても、自己満足に終わる。業界情報になれば、世の中の一つの形になり、社会情報にまでなれば、自分たちの主張が多くの人たちに届く。

課長時代に発売された「スーパードライ」が大ヒット。当初は地域限定、しかも数カ月だったにもかかわらず、初年度の販売量が大瓶換算で2億6000万本に達し、二度と破られることのない大記録となる。その陰で、CC戦略が貢献した。

その後、経営戦略など中枢部門へ転じ、CI導入から4代の社長に仕え、スピーチライターも務めた。念願の営業も経験し、大黒柱の酒類本部長にもなった。この間の歴代トップとのやりとりは次号で触れるが、毎週、社長室へ足を向け、社内外の様々な情報を報告し、対応策を話し込む。トップに「天下の目」を知っておいてもらうためだ。

2010年3月、社長に就任。この年、国内のビール市場はピークの94年から2割近くも縮小し、再び反転攻勢の大役を担う。以来、社長室のドアを開け、いつでも、お客や社員との応対を優先している。この3月にCEO兼務となっても、変わらない。自ら人と会いに出かけ、現場も回る。「天下の目」でみて「天下の耳」で聞くことは、もはや日常のことになっている。

(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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