新ジャンルが伸びる年間出荷数
図を拡大
新ジャンルが伸びる年間出荷数

横綱はつらい。

情況がどうあれ、どっしりとした「横綱相撲」を取らなくてはいけない。そのうえで常に優勝を期待される。勝てばいいというものではなく、勝ち方にまで風格が要求される。

ビールの横綱といえばスーパードライだ。この強力なブランドが業界盟主のキリンから首位の座を奪ったことは周知であろう。しかし皮肉にも、昨年の首位明け渡しの遠因になってしまった。第三のビール、クリアアサヒが好調ではあるが、どうしてもスーパードライに力が入ってしまう。横綱的ブランドの販売が伸び悩んだのだ。

<strong>泉谷直木 アサヒビール社長</strong>●1948年生まれ。京都府出身。京都産業大学法学部卒。72年入社。86年から10年間広報マンとして活躍。経営企画部などを経て2003年取締役に就任。10年3月から現職。完成間近のスカイツリーを背に逆襲を誓う。
泉谷直木 アサヒビール社長●1948年生まれ。京都府出身。京都産業大学法学部卒。72年入社。86年から10年間広報マンとして活躍。経営企画部などを経て2003年取締役に就任。10年3月から現職。完成間近のスカイツリーを背に逆襲を誓う。

第三のビールは儲からない。世の節約志向から、消費者の購買はビールから第三のビールに流れている。第三のビールは酒税が安い分(ビールの税金は350ミリリットルで77円。第三のビールは28円)、価格の安さが魅力だが、当然、利鞘が小さくなる。ビールのレギュラー缶販売価格が205円なら税金を引いて128円、第三のビールの販売価格が120円とすれば税金を除いて92円だ。

ビールよりも第三のビールが売れる。ビールの代表格はスーパードライだから、当然売り上げは落ちる。第三のビールをめぐる“ビール・ウォーズ”は、アサヒには芳しくないシナリオだろう。

「シェアというのはお客さまの評価の結果です。ビール、第三のビールについて、もっとお客さまに喜んでいただく商品を提案していかなければいけませんね」

泉谷直木社長は言う。片手にクリアアサヒ、片手にスーパードライ。2つのレギュラー缶を握る手に力が入る。

当然、最前線の第三のビール市場、クリアアサヒで仕掛ける。しかし同時にスーパードライの戦略を見なおす。泉谷の口調は滑らかだが強靭である。