バリューアップした“横綱”の存在感は、スーパーでの商談でも威力を発揮する。営業12年目の山下智輝は全国展開の大手スーパー「ダイエー」を担当。ビール類の提案に工夫をこらす。
「以前は、スーパードライを提案すればどんどん売ってくれた。今はそれだけでは不十分なんですね。お客さまや店舗の店長の意見を取り入れながら、一緒の立ち場で売り場づくりを考えています」
たとえば、暑く湿気の多い時期、土用の丑の日に向けて、鰻とスーパードライをセットで売り出すような売り場提案をする。バテ気味のときに脂っこく精の付く鰻。そこにキレ味に秀でるスーパードライがあれば、客は目を輝かせ、喉を鳴らすだろう。
提案のタイミングも大事だ。そこでクリアアサヒが活躍する。
「行楽シーズンの5月はビール類の売り上げが伸びます。連休前や連休中はビールが伸びる。しかし連休後には財布の紐が固くなるのか、第三のビールが売れます。そこでクリアアサヒを大きく展開していただく。週ごとに細かい提案をしていくわけです」と言う山下に、「ダイエー」チーフマーチャンダイザーの江崎理実も「繊細で丁寧な情報をいただける。売り場の具現化の提案が明確でありがたい」と頷いた。
スーパーでは年を52週に分けて精密な売り場づくりをする。正月、ゴールデンウイーク、お盆、そしてキリンでも触れた「父の日」や「サッカーW杯」などがキーワードとなる。プラス、給料日前などの「消費者の財布の中身」という視点を据えた。これも泉谷の言う「情報の鮮度」のひとつだろう。
この6月、スーパードライの販売数量は1100万ケース。前年比100%を達成した。前年割れを回復したのは09年4月以来である。
今や、横綱に15日間全勝を求める時代ではないのかもしれない。勝たなければいけないときに横綱相撲でしっかり勝つ。盛夏に向けて、クリアアサヒとの連携を取りながらスーパードライを前面に打って出る。(文中敬称略)