ヤフー香港の通販サイト「超市」をのぞくと、プロスコーポレーションの商品があった。6~8品目の2人前野菜詰め合わせで329香港ドル。日本円で約4300円だ。
「4~5人前で500香港ドルのセットは売れ行きが思わしくありませんでした。2人前にして価格を下げたところ、1カ月で30~40件と注文が急増。まだまだマーケティング段階ですが、いい商品なら売れると感じています。指名で買ってもらえるようにブランドを高めていくだけです」(山田氏)
『日本は世界5位の農業大国』などの著書を持つ浅川芳裕氏によれば、国内における農産物の流通においても、クール宅急便の開始が優良農家の自立を助けたという歴史がある。
「同じ産地で同じ作物をつくって大量輸送をしていた時代と違って、控えめだけどいいものをつくっている農家の商品が全国で売れるようになりました。国際クール宅急便のスタートで、売り先はさらにアジアに広がります。『輸出』といっても難しい話ではなく、送り先の住所がたまたま海外なだけ。フロンティア精神は不要です」(浅川氏)
物流面さえ整えば、アジアへの距離が近い日本は圧倒的に有利な立場にある。安全でおいしい農作物を安定供給する自信があり、宣伝や販売の方法を試行錯誤していく柔軟性を持った農家にとってTPPはむしろ追い風になるかもしれない。
(朝妻一洋、芳地博之、市来朋久=撮影)