前日に地方の拠点に集められた農産物はいったん羽田に集められ、深夜便で24時間稼働の那覇空港へ運ばれる。沖縄から香港までは飛行機でわずか2時間。朝5時半に沖縄を出た野菜は7時半には香港に到着し、通関を経て、香港ヤマトの陸送ネットワークによって香港の各家庭に届けられる。その間はヤマト運輸とANAの連携によって一貫保冷システムが保たれている。
ハブ空港とは、各地からの乗客や荷物をいったん集めて目的地別に振り分けて送り出す役割を持った空港のこと。ハブ空港を活用することで都市間を結ぶ飛行機は格段に少なくて済む。アジアでは韓国・仁川国際空港が有名だ。
那覇空港には仁川空港より「地の利」がある。香港や台北などのアジア南方の各都市にも近いのだ。税関も含めて24時間稼働であり、滑走路や貨物倉庫の設計もコンテナの積み替えのために最適化されている。
「沖縄貨物ハブは09年10月にスタートしましたが、まだ赤字です。飛行機を2回飛ばすことになるので着陸料などのコストが2倍かかる。電子部品や医療機器、アパレルの試作品などスピードが重視される高付加価値商品の搭載を増やすことが必要です」(貨物事業室の高野弘樹氏)
起爆剤の一つとして期待されているのが国際クール宅急便であり、橋頭堡として選んだ都市はオイシックスと同じく香港だった。
「10年に開業した香港ヤマトが緻密な物流ネットワークで個人宅に配送できているのが前提です。今後、シンガポール、台湾、上海、マレーシアにも国際クール宅急便の導入を目指しています」(ヤマト運輸グローバル事業推進部の田中元樹氏)
なお、食品検査が必要なため、香港と日本の個人同士が国際クール宅急便を利用して食料を受け渡しすることはできない。香港在住の人が国際クール宅急便を使って日本各地からの「お取り寄せ」を楽しむには、楽天市場もしくはヤフー香港を利用する必要がある。