暗黙知【5】――自分の強みに引き寄せられるか?

自分の強みに引き寄せて話をするのは、じつはなかなか難しいことです。

たとえば、商談を始める前に、天気やニュースなどの雑談から入ることがあります。場を和ませるために、相手の趣味の話から始めることもあるでしょう。雑談が話の導入として機能すれば問題ありませんが、雑談が盛り上がったときに「稼げない人」が陥りやすいのは、完全に相手のペースに引きずられて、なかなか本題に入れないことです。雑談だけでタイムオーバーになってしまえば、お互いに何のために面談の時間を持ったのかわかりません。

●目的を明確に意識し、軸からブレないように

一方で「稼ぐ人」は、どれだけ話題が逸れたとしても、必ず自分の強みに引き寄せたり、本題に戻すことができます。

私の場合はファイナンシャル・プランナーなので、やはりお金や経済の話になります。たとえばワイン好きの顧客とワインの話で盛り上がったとします。そのままワインの話だけで終わるのではなく、「いま売れているワインが国に与える経済効果は……」のように必ずお金の話に落とし込むのです。自分の存在価値を相手に認めてもらうには、相手を自分の土俵に引きずり込んで勝負することが肝心だと思っています。

そのためには、話す目的を明確に意識する必要があります。何のための面談なのか、契約を取るためなのか、相手の情報を探るためなのか。こうした目的をしっかりと意識し、その軸からブレないようにすることが大切です。

もう一つ大切なことは、自分に自信を持つことです。相手のペースを遮って、話の方向を転換するには勇気がいります。相手が「稼ぐ人」ならなおさら、相手のエネルギーに圧倒されて、ペースに呑まれてしまうでしょう。それに負けないための自信を得るには、自分の得意分野で強みを磨き、自分の軸を確立する以外に方法はありません。

自分ならではの武器を、どれだけの時間とお金をかけて磨き上げてきたか。それが軸の基盤となり、相手を自分の強みに引き寄せる自信の源となるのです。

オフィシャル代表取締役 江上 治 
1967年生まれ。有名スポーツ選手から経営者まで年収1億円を超えるクライアントを50名以上抱える富裕層専門のカリスマ・ファイナンシャル・プランナー。大手損保会社、外資系保険会社の代理店支援営業の新規開拓分野で全国1位を4回受賞、最短・最年少でマネジャーに昇格を果たし、FP事務所を設立。最新刊に『一生かかっても知り得ない年収1億円人生計画』。
(構成=前田はるみ 撮影=小原孝博 写真=PIXTA)
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