違った意味でのチームワークを求められるのが、マスコミの仕事です。フジテレビの人事部からは、『希望部署に配属されなかったら……という質問に、絶妙な間で〈困ります〉と答えた学生を三重丸で通しました』というエピソードが。テレビ局は、社員だけでなく、制作プロダクション、芸能事務所、出演者……と多様な人間関係のなかでバランスよく立ち回っていく必要のある世界。体力的にきつい現場仕事も多いため、『底抜けに明るく、失敗したとき大きな声で謝れる人』という点が採用のポイントであったり、若干男性が多めの男女比にもうなずけます。
『求める人物像をあえて決めない』というのはサントリー。『5年後、10年後のサントリーで活躍しそうな人物、という軸はありつつも、面接官がおのおの自分の基準で学生の魅力や伸びしろの部分を見る』のだとか」
このように人事部の声を並べると、当たり前のようだが、最後の最後で合否が分かれるのは「面接官や企業との相性」ということになるようだ。ホームページや主力商品から受けるイメージではなく、説明会やOB・OG訪問で会った社員の雰囲気こそが、その企業の求める人物像を知るうえで大きなヒントとなりそうだ。
結局、採用担当者は採用のプロではない。たまたま人事部に配属されただけにすぎないのだ。そう考えれば、「成績」「学歴」「体育会」など目に見える基準に頼る傾向も十分うなずける。ゼネラリストとして活躍できる能力があることを見抜いたうえで、“自社に合うか”を最終判断の材料にするというのは、合理的だといえるのではないだろうか。
「学力重視への回帰も、以前から続く体育会優遇や有名大学の理系ゼミからの推薦枠も、同じ軸で貫かれています。それは“1つの目標に地道に打ち込んでいること”、そして“その努力が見えやすいこと”です。これについては小手先で乗り切るような奇策が通じない。実直な努力を評価する方向へ企業も向かっています。学生も親も“目に見えやすい成果に向かって地道に取り組む”ことがこれからの内定への近道」(森氏)
大学受験さえしっかりやっていれば就職は逃げ切れたバブル期、小手先の面接テクニックで何とかなった人物本位時代を経て、ようやく学生の努力が評価されるような時代になったのかもしれない。