なぜ、学力重視に回帰したのか?
こうした不明確な採用方法への反省から、ここ1、2年のトレンドとして「人物重視採用」から「学力(学歴)重視採用」への回帰が挙げられると森氏。面接で察するしかない「人柄」の部分よりも、大学名や成績、SPIで明確に線引きができる「学力」の部分に重きを置く傾向が今後強まる見込みだ。
「もちろん、筆記試験だけで採用するわけではありません。面接が最重要なのは変わらない。しかし、その面接までにたどりつくためのハードルは高くなります」
面接に到達するまでの選考過程で、これまで以上に学生の絞り込みを行うというのである。
「企業が再び学歴や学力を重視し始めたのは、『人物重視』として採用した学生のあまりの使えなさに、人が人を見る目の不確かさを思い知ったためです。昨今、熱心な学生は就活セミナー等に通い、『エントリーシート上手』『面接上手』になっています。悪い言い方をすれば『ごまかし上手』で、巧妙に企業が欲しい人物像を演じられるのです。こうして入社した学生の中に、使えない人材が散見されました。能力ではなく、入社への熱意に着眼していたので、希望部署に配属されないなどの理由で、やる気が下がればパフォーマンスも下がってしまう」
確かに就職活動を始めるまでよく知らなかった会社に対して、“一生この会社で頑張る”と言っても、入社後にその熱意は冷めてしまうかもしれないが、学力や思考力はそう簡単には落ちない。
「学生の能力を測る以外に、採用側にも学力・学歴重視のメリットがあります。それは採用にかかる手間の省略。私が学生だったバブル期は、いわゆる『学歴重視採用』の全盛期。各大学の学生課が持つ名簿をもとに、企業から学生に説明会の案内が直接送られるので、大学名によって『門前払い』があった。しかし、大学名を不問とする企業が現れたのち、リクナビやマイナビサイトが登場、すべての学生に門戸が開かれ、就活が一見『平等』になってしまったのが、企業にとっても学生にとっても不幸の始まり。中堅以下の大学の学生も有名企業にエントリーシートを送るようになり、人事部を泣かせることになったのです」
多くて十数人の人事部が、短い就活期間中に読めるエントリーシートの数はたかが知れている。にもかかわらず、人気企業の採用には、何万人という学生がエントリーする。森氏によれば、「大学名による門前払いは、復活しています。大企業なら、入試難易度上位20校が目安」
旧7帝大、東工大、一橋大、筑波大、早慶、GMARCH、関関同立で、すでに22校である。いかに狭き門なのかがわかる。