また、その企業が創業期、成長期、成熟期の「どの時期にあるのか」というのも重要な要素だ。

「たとえば、私の前職であるリクルートは、5~6年前までは体育会系の企業だといわれていました。企業として成長期にあたる時代には、何よりも営業力が求められるので、営業向きの人材を採用していたのでしょう。その後、企業として成熟し、グローバル化やIT化を促進している現在では、グローバルな展開に対応できる語学力のある学生や、高い情報技術を持った学生が多く採用されています。サイバーエージェントも、アメーバブログ(アメブロ)がヒットしていた時代に採用したのは、『次の一手が打てる学生』でした。『アプリ開発にも力を入れていくべきだ』などと、企業の未来予想をして、そこに自分がどのように貢献できるのかを語れた学生が、人事部の心をつかんだのです。“欲しい人材像は似てくる”と言いましたが、最終面接まで進めば学生の実力はほぼ一緒。そこでこうした、社風や企業を取り巻く環境に合った一言が合否を分けることもあります」(小寺氏)

大手企業人事部長の最終判断基準

これまで、さまざまな企業の人事部に取材を重ねてきた森氏は、名だたる企業の人事部長の生の声を聞かせてくれた。

「三菱東京UFJ銀行の人事部からは、『素直な人が欲しい』という話を聞きました。これは、『組織のいいなりになる人間』という意味ではなく、日々学ぶべきことを学び、吸収し、トライする、『目の前のことに実直に取り組める人』という意味だそうです。三菱東京UFJ銀行は、個人の預金口座数だけで約4千万口座を持つ世界最大規模のメガバンク。社会やお客さまへの貢献という意味では、『黒子として汗を流せる人』ともいえるでしょう。

JR東海は、終身雇用を掲げる『古き良き日本企業』の代表格。人事部長は、『協調性やコミュニケーション能力はもちろん、チームの中で自分の考えを実現させるために、周囲を納得させる力を持った人を求めます』と話していました。終身雇用の企業は、ある意味、大きな家族のようなもの。そういった場で成長していくためには、チームワーク・プラスアルファの能力が求められる。