雪は弱まらず、激しさを増していく

7時32分、大月駅に到着した松永が朝礼をすませると積雪は10センチを超えていた。雪は相変わらず降り続ける。

大月駅で立ち往生している中央本線の車両。ホームの高さまで雪が積もっているのがわかる。(JR東日本=写真提供)

大月駅長の松永は、近隣の笹子、初狩、猿橋、鳥沢、梁川の各駅の管理も担当する。笹子と梁川は無人駅。ほかの駅は協力会社に駅の管理を委託しているが、大雪で係員が出勤できず、やはり無人になっていた。10時に、非番の駅員3人とJR八王子支社からの応援3人を、西と東の二手にわけて駅の雪かきに向かわせた。彼らが大月駅に戻ってきたのが正午過ぎ。出勤した「繰り下げ日勤」の4人とともに大月駅の除雪を終えた松永は、「これで一安心」と胸をなで下ろした。

けれど雪は弱まらず、激しさを増していく。17時、八王子支社からさらに4人の増援が到着。これで23人が大月駅に配置された。

予報ではもうすぐやむはず。駅員の畑井健彰はそう考えながら信号所に詰めていた。畑井は自分の役割を「東京の総合指令室と駅の繋ぎ役」と説明する。指令室からの連絡を一手に受け、運行状況のやり取りや天候状況の報告、列車の進路を変えるポイントの操作などを担う。

暗雲は一向に晴れず、雪がやむ気配もない。このまま降り続ければ運転見合わせも時間の問題かもしれない、と13年間の勤務経験から畑井は感じていた。

23時5分、指令室から信号所に全線不通を告げる一報が入った。「ついにきたな」と畑井は思った。相模湖駅での架線切断が原因で高尾駅~小淵沢駅間で全線運行を見合わせるという。畑井はすぐに駅長室にいる松永に報告した。

4番線には、約50人が乗る甲府行きの列車が止まったまま。本来なら乗客を目的地へ送るため代替の輸送手段を探るのだが、すでに東京と山梨を結ぶ国道20号線は上下線ともに通行止めだった。(文中敬称略)

(プレジデント編集部(人物)=撮影 JR東日本=写真提供)
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