年齢、国籍など複数次元で進めよ

もし組織が「タスク型の多様性」を高める必要があり、それが女性・外国人の登用によって効果的にもたらされると判断するなら、今度はデモグラフィー型の多様性を「多次元で」徹底的に進めることが肝要になります。

経営学で注目されている考えに「フォルトライン(=組織の断層)」理論があります。たとえば、日本人男性が30人いる組織に「30代の女性」が5人入っても、同じ属性を持つ彼女たちだけが固まってしまい、日本人男性との間に「断層」が形成され、タスク型の多様性が実現しません。そうではなく、50代、20代、外国人、といった多様な「デモグラフィー次元」で女性を加えると、先ほどのように一元的なグループ分けが不可能になるため、断層効果が弱まり、組織のコミュニケーションがスムーズに進むのです。

さらに男性側も年齢の幅を広げ、さらに外国人も加えれば、断層がなくなり、「組織内組織」が生まれにくくなります。このように、デモグラフィー型の多様性を進めるなら、中途半端ではなく、複数次元で徹底的に行うべきなのです。

ユニクロ銀座店では多くの外国人が働く。(写真=時事通信フォト)

これをうまく実践しているのが、ユニクロを展開するファーストリテイリングではないでしょうか。同社は2012年から新卒採用全体の8割にあたる1000人ほどの様々な国籍の外国人を毎年、採用しています。女性社員も幅広い年齢層・国籍で多く在籍しています。こうした施策は、まさにフォルトラインを減らし、タスク型の多様性の効果だけをうまく取り込んでいるといえます。

同社がさらに興味深いのは、新卒や若手だけではなく、H&MやGAPといった競合のグローバルブランドから引き抜いた外国人人材も積極的に採用し、海外部門の幹部に抜擢していることです。これは、一括採用により若手だけに外国人を登用しがちな一部の日本企業との大きな違いです。すなわち、若手社員から幹部までに外国人を登用することで、「若手vs幹部」「外国人vs日本人」というフォルトラインの可能性を打ち消しているといえるのです。

中途半端なお題目だけのダイバーシティは組織によい影響をもたらしません。やるなら徹底してダイバーシティ経営を進めるべきなのです。

(構成=荻野進介 撮影=今野 光 写真=時事通信フォト)
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