完成部分までくず鉄にしたという告発
中国人の工事関係者が去ったあと、ほかの区間でも、残された設備が解体され、運び出されていった。
2016年、路線の西の起点ティナコ。工事現場の設備は根こそぎ剥ぎ取られ、その跡には家畜を追う道ができている。ベネズエラ独立系デジタル紙のエル・エスティムロによれば、ティナコ市議のサイダ・ブルゲラ氏はエル・ピタソの取材にこう嘆いた。
「中国人の宿営地は置き去りにされ、何もかも持ち去られた。見ると悲しくなる」
2年後の2018年1月には、労組の幹部たちが声を上げた。曰く、東の区間が見る影もなく荒れている。ベネズエラ独立系紙のエル・ナシオナルが地元紙エル・ティエンポを引いて伝えたところでは、アナコとザラザのあいだにあった宿営地は打ち捨てられ、荒らされていた。線路は雑草に覆われて劣化し、セメントを運んだトラックも傷んだままに放置されていた。
住民らによる略奪ばかりか、政府までこの路線を見捨てたようだ。2021年11月、マドゥーロ政権に批判的な、2015年選出国会のマルコ・アウレリオ・キニョネス議員が、SNSで告発している。工事は3割の段階で止まったが、わずかに完成していた部分まで、政権が解体してくず鉄として売っているという。
不可解なことに、工事を途中で投げ出されてなお、政権は中国中鉄との関係を断たなかった。アルマンド・インフォによると、労組が東の区間の荒れようを訴えたのと同じ2018年、デルシー・ロドリゲス執行副大統領(当時)が北京を訪れている。滞在中には、中国中鉄の子会社とのあいだで、鉄鉱石や金の増産のための契約が交わされた。ロドリゲス氏は9月10日、中国側と両国の協力を「固め、広げる」と誓い合ったとSNSに投稿している。
かつて北京で協力を誓った暫定大統領
ベネズエラと中国の緊密な関係は、マドゥーロ氏が拘束されるまで続いた。いま、中国が貸した金は、回収の見通しが立たなくなりつつある。
2024年4月、マドゥーロ氏の息子が、北京から済南へ向かう高速列車の車内で動画を撮っている。ベネズエラは高速鉄道を中国に学ぶのだと、画面の向こうに語りかけた。SNSには、動画の列車を「(ディオスダド・)カベジョが開通させたティナコ―アナコ鉄道に似ている」と皮肉る書き込みがあったと、コロンビアニュース専門チャンネルのNTN24は伝えている。カベジョ氏は、この鉄道の着工時に公共事業・住宅相を務めていた人物だ。
その1年8カ月後の2026年1月、父のマドゥーロ氏が米軍に拘束された。ブルームバーグによると、中国の当局者は、融資について保証を取りつけようと、アメリカとベネズエラに協議を申し入れたという。在米中国大使館の報道官は、「正当な権益を守るため、あらゆる必要な措置を取る」と表明した。その「権益」には、ベネズエラに貸した巨額の資金も含まれる。
中国は2007年以降、原油での返済を条件に、600億ドル(約9兆4800億円)を超える資金をベネズエラに融資してきた。だが、そのうち未返済の額は公になっていない。ベネズエラが2017年の債務不履行を境に、借り入れの詳細を明かさなくなったからだ。推計によって100億ドルから200億ドル(約1兆5800億〜3兆1600億円)と、2倍もの差がある。
中国にとってさらに厄介なことに、暫定大統領としてアメリカに接近したのは、2018年に北京で中国との協力の拡大を誓ったデルシー・ロドリゲス氏である。ロドリゲス氏の暫定政権は5月13日、対外債務を再編する、つまり返済の条件を組み直すと発表した。CNNが紹介した推計では、対外債務は総額1500億〜1700億ドル(約23兆7000億〜26兆9000億円)で、そのうち約1割が中国からの借り入れだ。

