赤字で続けた規模拡大の執念
だが、現実は簡単では無かった。抜いても抜いても生えてくる雑草との戦い。1日20時間、深夜までライトを照らして畑に立ち続けたという。必死の努力にもかかわらず、初期投資やパートの人件費が重くのしかかる。初年度の売上は無情にも400万円にとどまり、マイナス90万円の赤字を出した。
それでも、清水さんは決して諦めなかった。「農業で食っていくには、さらに面積を増やすしかない」と腹をくくり、2年目に2.7ヘクタール、3年目には5.4ヘクタールと倍々ゲームで規模を拡大。就農して4年目の2014年に「ねぎびとカンパニー」と法人化を果たした。それと同時に、市場暴落の苦い経験をバネに、市場に依存しない「スーパーとの直取引ルート」を自ら切り拓いていった。
しかし、そこに「新たな壁」が立ちはだかる。直取引を開始し、「2本198円」までは順調に卸値を上げたものの、「2本298円」へ値上げしようとすると、バイヤーから「そんな高値は無理だ」と拒絶されてしまったのだ。
「スーパーや消費者に高値を納得してもらうには、従来とは次元の違う『味』と『ブランド』を作るしかない」
超高級長ネギ「モナリザ」誕生
「量」だけでは足りない。ここから清水さんの「質」への探求が始まった。
有機肥料主体に切り替え、2015年には糖度19.5度、2017年には21.6度というフルーツ並みの糖度を叩き出す。そして2019年、300万本から最高品質の3本を選抜する超高級長ネギ「モナリザ(1本1万円)」を発表。自動車メーカーが技術の粋を集めたF1マシンを作るように、「モナリザ」という象徴を打ち出して「この会社の長ネギはすごい」という認知を生み出し、一般的な規格の値上げを成功させた。これらの取り組みが評価され、山形県ベストアグリ賞・農林水産大臣賞を受賞するに至った。

