事業計画書は銀行に任せる

ねぎびとカンパニーは、いち農業法人でありながら、銀行を味方につけ、全国に高額な選別機を配備するなどインフラ整備を進めている。資金力の秘密について伺ったところ、銀行を味方につける方法があると教えてくれた。

普通は自分で事業計画書を作成して銀行へ持ち込み、ダメ出しをされて修正を繰り返す。しかし清水さんの手法は真逆だという。

「銀行は金を貸したい。だったら『1億円借りたいから、融資が通るような事業計画書を作って』と言って銀行員に作ってもらう。自社が黒字で収益基盤がしっかりしていれば、これが一番確実で早い」

さらに清水さんは、会社のキャッシュフローや売上データをメインバンクの担当者へフルオープンに開示している。

「銀行の担当者を自社の財務の味方にしてしまう。いついくら金が入るかを全て把握しておけば、向こうから『今期これだけ利益を出せば、来期はここまで借入枠が上がりますよ』と提案してくる。隠し事をせず銀行員を自社のファンにすることこそ、資金調達の最短ルート」

この信用力を背景に、資金調達を実施し、1台数千万円の選別・ピッキング機器を購入して全国の「zero」集荷拠点へ配備している。

農業界で他と類を見ないぐらい綺麗に整備されている「ねぎびとカンパニー」の本社
筆者撮影
農業界で他と類を見ないぐらい綺麗に整備されている「ねぎびとカンパニー」の本社

「サラリーマン心理」をハックする営業の真髄

商談においても、清水さんの営業手法は戦略的である。自分の商品の売り込みではなく、「相手のバイヤーが社内でどう評価され、数字を上げられるか」を計算して提案する。

代表例が、従来の業界常識だった「3本198円」から「2本198円」への改定を成功させた商談術である。単に「美味しいから値段を上げてくれ」と頼むのではなく、バイヤーへ数字を提示した。

「Lサイズ1ケース(45本入り)を3本束で売れば15セット・売上2970円ですが、2本束にすれば22.5セット・売上4455円になります。同じ1ケースで御社の売上が50%アップするんですから、一度試してください」。バイヤーの成績に直結するロジックを示すことで説得を勝ち取り、スーパーの売上を伸ばしながら自社の利益率向上を実現させた。

さらに、「近隣の店舗と同じブランドは並べたくない」というバイヤーのニーズにも対応した。「寅ちゃんねぎ」「やわとろ葱」「グルメ」「雪の女王」などバリエーション豊かな独自ブランドを複数用意し、選んでもらうことで、全国120〜130社との直取引ルートを確立している。