日本経済団体連合会(経団連)で、次期会長に内定した東レの榊原定征会長を支える布陣が固まった。6月3日開催の定時総会で2期4年の任期満了を迎え、退任する4副会長の後任を2月10日の会長・副会長会議で決めた。また、会長に次ぐナンバー2で、会長の諮問機関である審議員会の新議長も内定した。
新任副会長は日立製作所の中西宏明社長、JXホールディングス(HD)の木村康会長、NTTの鵜浦博夫社長、野村証券の古賀信行会長の4氏。再任と合わせて現在の副会長18人体制で榊原・経団連を支える。一方、会長の“お目付け役”審議員会議長には、JXHDの渡文明相談役に代わり、筆頭副議長にある三井不動産の岩沙弘道会長を起用する。
人選は権限を持つ米倉弘昌会長が当たったが、自ら指名した榊原次期会長に配慮した点は言うまでもない。しかし、新任副会長の出身企業を見る限りまったく新鮮味はなく、いわゆる「経団連銘柄」による指定席化した面だけが際立った。事実、日立、NTTは退任する副会長、JXHDは審議員会議長の出身会社。野村証券も何度か副会長を出している。
米倉会長は一連の人事を「経営者として優秀で実績を挙げてきた方々」と、副会長として申し分ない人格、識見を持つ点を強調した。ただ、経団連活動への貢献度を最優先した点は否めず、よく言えば手堅いが、「イノベーション」を信条とする榊原次期会長を支える布陣にしては、革新のイメージと程遠く映る。
半面、審議員会議長への岩沙氏の起用は、経団連の慣例からは異例ともとれる。過去、同議長は銀行、東京電力の出身で副会長経験者が就いた例はある。ただ、前身の評議員会時代から議長はほとんど製造業出身者が占めてきた。サービス化が進む産業構造に対応していないとの指摘もある中で、米倉会長が製造業出身の後継者にこだわった慣例は、審議員会議長にも当てはまる。しかも建設・不動産業界は不祥事に絡むリスクも高く、かつては重要ポストに就くことがなかった。
岩沙氏は2008~12年に副会長、その後審議員会副議長。東レと同じ三井系の重鎮・三井不動産の出身であり、榊原・経団連の後ろ盾としての役割に配慮した点も滲み出ている。