ポイント3 すべてを我慢せず「使うところ」を決める

収入の範囲内で暮らす土台ができたら、次に考えたいのが「何に使うか」です。老後の家計では、すべてを我慢する必要はありません。むしろ大切なのは、「使うところ」と「抑えるところ」をはっきりさせることです。

現役時代はなんとなくお金を使っていたという方も多いですが、老後は自分の時間をどう使うかが生活の中心になります。それに合わせて、お金の使い方も見直していく必要があります。優先順位が決まると、「ここには使う」「ここは抑える」という判断が自然にできるようになります。その結果、満足度は高まり、ムダ遣いは減っていきます。限られた収入の中で満足度を高める。この視点が、老後の生活を豊かにします。

特別費について、もう少し詳しく説明しましょう。家電の買い替え、医療費、冠婚葬祭、帰省費用などは、頻度は低くても確実に発生します。家計が崩れる多くの原因は、この特別費が重なることです。日々の生活費は黒字でも、イレギュラーな支出が続くと一気に赤字になります。

大切なのは、特別費を例外にしないことです。年間でどのくらいかかるかを見積もり、毎月少しずつ積み立てておく。年間24万円なら月2万円。このようにあらかじめ分けておくだけで、家計の安定感は大きく変わります。固定費を減らし、浮いたお金がちゃんと貯まるしくみをつくれば、無理に節約しなくても、自然にお金が残るようになります。

ポイント4 貯蓄を「毎月の赤字埋め」に使わない

老後の家計では、現役時代に蓄えておいた貯蓄の位置づけを間違えないことが重要です。私はよく、「貯蓄は卵を産むにわとりのようなもの」とお伝えしています。にわとりを食べてしまえば、その後は卵が手に入りません。しかし、にわとりを残しておけば、少しずつでも卵を産み続けてくれます。老後のお金も同じです。

元本である貯蓄を日常的に取り崩してしまうと、いずれは尽きてしまいます。一方で、貯蓄はできるだけ手をつけず、そこから生まれるお金、あるいは余剰の範囲で使うことができれば、お金は長く持ちます。もちろん現実には、すべてを守り切ることは難しい場面もあります。金融資産を取り崩す必要が生じる状況も必ずやってきますが、「にわとりは食べず、卵をいただく」という意識を持つだけで、お金の使い方は大きく変わります。この発想が、老後の資産を長持ちさせる大きな支えになります。