――北朝鮮に対してどのような印象を持っていますか。また、あなたは拉致議連の入会を拒みました。なぜですか。
【猪木】みなさん北朝鮮は怖い国というイメージを持っているようですが、私も初めて訪朝したときは、平和な日本とは感覚がまったく違うという印象でした。それは、キューバのカストロ議長やブラジルのフィゲレード大統領と親しくなる前に感じたことでもあります。ジョークを飛ばしたりしているうちに、段々と歓迎されるようになった。
ご指摘のとおり、拉致議連に誘われたのですが、議連役員の理解を得て私は入会を見合わせました。その点についてメディアから批判があることは知っています。しかし、拉致議連に入ると向こうの目には、「敵」というラインが引かれてしまう。まずは相手の懐に入る、そしてつくったパイプを大事にしたい。これからも私は両国のスポーツ交流を推進していく。
――北朝鮮を相手に、どのようなジョークを飛ばしたのですか。
【猪木】テポドン(ミサイル)が世間を騒がせているときだったので、相手側にミサイル問題を正面からぶつけました。
そしてその後の宴会の席で、私が大きな声で「ところで!」と叫んだら、皆がびっくりした。
「日本の“ミサイル”も北朝鮮に向いています」と言ったら皆が息をのんだ。そして、「北には美しい女性が多いですから(笑)」なんて言ったら、一発で場が和んだ。
――あなたの人気のことだけを考えたら、北朝鮮に行く必要はないと思います。なぜ北朝鮮問題に関わり続けるのですか。
【猪木】大好きな言葉の一つに「何にもしないで生きるより、何かを求めて生きようよ」がありますが、その心境です。人がやらない何かにチャレンジする、猪木にしかできないことに挑戦していくということです。1976年、当時のボクシング世界ヘビー級チャンピオンであるモハメド・アリと戦ったことがあります(「格闘技世界一決定戦」)。今になって伝説の名勝負と言われていますが、当時は全然評価されなかった。