世界の中の10%に向けて「高くとも欲しいと思われる車」(猿渡)をつくり、結果としてシェア2%程度を獲得していくのがマツダの戦略である。スカイアクティブをはじめとする主に技術により会社トータルとしての価値を高め、すべての消費者ではなく限定された10%の“マツダを好きな人(ファン)”だけを狙っていくのだ。
「モノ造り革新」の意図は美しい。だが、これまでのマツダは、栄光の時代よりも、挫折の時代のほうが長く、試練と葛藤とを繰り返してきた。
「マツダは長年フォード傘下だったため、国内生産の割合が大きいのです。円高局面になると経営は厳しくなる」(ライバル社首脳)。13年10月における自動車8社の国内生産台数を見ると、1位はトヨタの28万9961台(前年比9.4%増)で群を抜いている。では2位はどこか。答えはマツダの9万3590台(同30.3%増)なのだ。以下、ホンダ、スズキ、日産と続く(図参照)。
つまり、トヨタに次いで日本で多くの車をつくっているのはマツダであり、雇用をはじめ国内産業への貢献度は大きい。だが、再び円高基調となれば、大きな影響を受ける構造である。
同月におけるマツダの世界生産に占める国内生産台数の比率は、78.4%。富士重の78.9%と双璧だ。国内生産割合が60%を超えるのは2社だけで、最低は日産の17.4%。さらに、マツダの輸出は7万1644台(同16.1%増)と、国内生産のうち実に76.5%を占める。富士重工の67.8%を抑えて輸出比率は断トツの1位である。
中国地方が拠点のマツダは、地域のサプライヤー(納入業者)との相互依存関係が強く、日本でのモノづくりを基盤としてきたのが特徴だろう。
筆者は超円高だった12年夏、山内孝現会長(当時は社長)に取材したが、このとき山内は「(14年のメキシコ工場の稼働開始などから)16年には世界生産台数を170万台に伸ばすが、国内生産は85万台を維持していく」と語っていた。グローバルで年間約490万台(12年度)を販売する日産が「国内生産は100万台を維持する」(日産幹部)のと比べると、マツダの国内生産割合は大きい。
(文中敬称略)