ほかの病気でも起こる症状

過敏性腸症候群の診断には、国際的に用いられている「Rome IV基準」が参考にされます。最近3カ月の間、平均して週1日以上の腹痛があり、その痛みが「排便に関連する」「便の回数の変化に関連する」「便の形状の変化に関連する」という3つのうち2つ以上に当てはまることが診断の目安です(日本消化器病学会. 2020)。

ただし、これらの条件に当てはまれば過敏性腸症候群と決まるわけではありません。腹痛や便通異常はほかの病気でも起こるため、症状の経過やほかの病気を疑うサインなども確認したうえで診断されます。

また、過敏性腸症候群では、ストレスや心理的な負担によって症状が悪化することがあります。同じ人でも、仕事が忙しい時期や緊張する場面では腹痛や便意が強くなり、反対に休日などには症状が和らぐこともあります。こうした症状の変化には、脳と腸の密接なつながりが関係していると考えられています。

おなかが気になる女性
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脳と腸は互いに影響し合っている

過敏性腸症候群を理解するうえで欠かせないのが、脳と腸は互いに影響し合う関係であるということです。緊張するとお腹が痛くなったり、強いストレスを感じると急にトイレに行きたくなったりするのは、その身近な例です。

脳が感じたストレスは、神経やホルモンなどを介して腸の動きや、腸から伝わる刺激の感じ方に影響する一方で、腸の状態も脳に伝わり、ストレスや感情などに影響を及ぼすことがあるとされています(Mayer et al., 2022)。こうした脳と腸の双方向のつながりは「脳腸相関」と呼ばれ、ストレスによって消化管の運動や知覚、分泌などが変化することが、これまでの研究で示されています(Konturek et al., 2011)。

過敏性腸症候群では、この脳と腸のつながりを通じて、ストレスが症状に影響すると考えられています(Mulak and Bonaz. 2004)。ストレスを感じると腸の動きが変化するだけでなく、腸から伝わる刺激を敏感に感じやすくなり、腸のガスや収縮など、通常なら気にならない程度の刺激でも腹痛や不快感につながることがあります(Schape and Stengel. 2022)。